雑草:名もなき草の名(42)セリは春を告げる水辺の香草

    みかドン ミカどん

    水田や川沿いなどの湿地にひっそりと広がる緑の草。
    ただの野草ではなく、正月料理にも登場するれっきとした食材でもあるせり。
    香りが良く、春の七草としても知られていますね。
    今回取り上げるせりは、雑草と食材の間を行き来してきた、不思議な草です。

    1.水辺に広がる香りの強い草

    セリの葉(写真:photo AC

    セリは、セリ科の多年草で、日本全国の水辺や湿った場所に生息しており、春になると鮮やかな緑の葉を広げます。

    特徴的なのは、その独特の香りです。葉を指でこすると、ツンとした爽やかな香りがたちのぼり、これが食用として重宝されてきた理由でもあります。
    セリが食用として栽培されるようになったのはなんと平安時代。驚くべき歴史があります。

    茎は地面を這うように伸びながら、節ごとに根をおろして増えていくため群集すると一面がセリで覆われることもあります。多年草であり、寒さの厳しい冬も枯れることなく越すことができる強さも持っています。

    花は初夏にかけて咲き、白く小さな花を傘のように広げます。花柄の長さが揃った花はまとまった形になり、慎ましい見た目をしています。
    見た目は実に控えめですが、季節の移ろいを知らせる存在でもあります。

    2.名前の由来は「競り勝つ」?

    慎ましい見た目とは相反して、少し強気な由来があるようです。
    セリという名前には、競り合って伸びるという意味があると言われています。

    面白いのは、この競り勝つというイメージが、縁起の良い言葉としても受け取られてきたことです。そのためセリは、春の七草のひとつとして、無病息災を願う正月明けの七草粥に欠かせない存在となりました。冬の弱った体を整えると同時に、「一年を元気に過ごせますように」という願いも込められているわけです。

    無病息災を願う七草粥(写真:photo AC

    また、食欲増進や体を温める働きがあるとされ、薬草としても重宝されてきました。宮城ではセリ鍋も有名ですね。野生のものは香りが強く、おひたしや和物などシンプルな料理で昔から楽しまれています。

    セリと見た目のそっくりなドクゼリという植物もあります。ドクゼリはシクトキシンという猛毒を持ち、誤食すると命を落とすこともある危険な植物です。
    食卓にセリを並べる前に、間違っていないかよく確認してくださいね。

    おわりに

    せりの花言葉は「清廉で高潔」。水辺の静かな場所で、控えめながらも力強く広がる姿に由来すると言われています。
    繁殖力の強さから、雑草として刈られてしまうことも多いセリですが、季節を知らせ、食卓を支え、人の願いを背負ってきた長い歴史があります。

    (ミカドONLINE編集部)

    出典:セリとドクゼリ(有毒)-東京都健康安全研究センター,セリ-PictureThis,和漢の暦「芹(せり)」-株式会社ツムラ