
二酸化炭素(CO₂)を減らすと聞くと、節電をしたり、車での移動を減らしたりする方法が思い浮かびます。そうした排出を抑える取り組みに加えて、海水からCO₂を取り出す技術の研究も進んでいます。
2026年9月、GSユアサ・東邦ガス・北海道大学は、海水からCO₂を直接回収する「Direct Ocean Capture(DOC)」の共同研究を発表しました。目指しているのは、回収に使う電力を減らすことです。なぜ海水からCO₂を取り出せるのか、そして、なぜ電力を減らす工夫が必要なのかを見ていきます。
海は空気中のCO2を吸収している
空気中にあるはずのCO₂を、なぜ海水から取り出すのでしょう。その理由は、海と空気がCO₂をやり取りしていることにあります。海は、人間の活動によって排出されたCO₂の一部も吸収しており、目には見えなくても、海水の中には炭素が蓄えられています。
ただし、海水に溶けたCO₂の多くは、そのままの状態ではなく、「炭酸水素イオン」や「炭酸イオン」という形に変わっています。このため、海水をくみ上げて、泡だけを集めれば回収できるというわけではありません。まずは、水中にある炭素を、気体のCO₂として取り出しやすい状態に変える必要があります。
そこで利用するのが、酸性・アルカリ性によって、水中の炭素の形が変わる性質です。海水を装置の中で酸性側にすると、炭酸水素イオンなどからCO₂が生じ、気体として分離しやすくなります。海全体を酸性にするのではなく、装置に取り込んだ海水を処理します。

海水からCO₂を取り出すと、その海水が空気中のCO₂を新たに吸収する余地が生まれます。DOCは、海と空気の間にあるこの関係を利用し、大気中のCO₂を減らすことにつなげようとする技術です。
回収に使う電力を減らす工夫
海水からCO₂を取り出せると分かると、次に気になるのは、装置を動かすための電力です。CO₂を減らす目的でも、回収に多くの電力を使えば費用がかかり、その電気のつくり方によっては新たなCO₂の排出にもつながります。そのため、回収できる量とあわせて、必要なエネルギーを考えることが大切になります。
今回の研究では、「電気透析」という方法を使います。これは、電気の力と、特定のイオンを通す特殊な膜を組み合わせ、水中の成分を移動させる技術です。海水を酸性側にするには水素イオンが必要ですが、通常の水の電気分解で得ようとすると、高い電圧が必要になります。
そこで取り入れるのが、「水素ポンピング」です。少量の水素を使って水素イオンを供給することで、水の電気分解を利用する場合よりも、その工程に必要な電力を抑えます。海水の性質を変えるために必要なものを、より少ない電力で用意する工夫と考えると、研究の狙いがつかみやすくなります。
家電を選ぶとき、機能だけでなく消費電力も気になるのと同じように、CO₂を回収する装置にも効率のよさが求められます。対象は海水という大きな話でも「必要な働きをできるだけ少ない電力で実現する」という考え方は、日々の省エネと共通しています。
今回の研究の注目点は、海水からCO₂を取り出す仕組みに、省エネの工夫を組み合わせようとしていることです。海と空気のつながりを利用しながら、回収に必要な電力や費用も減らしていく取り組みとして見ると、普段の省エネから一歩先にある技術も、身近な疑問から理解できるのではないでしょうか。
参考:GSユアサや東邦ガス、海水からCO2直接回収 消費電力6分の1に,国内初の技術を用いたDirect Ocean Capture(DOC)の研究開発を開始 ~海洋からの高効率CO2回収技術の開発を産学官連携で加速~,水素ポンピングを活用した電気透析法による海水からの二酸化炭素分離回収,海洋の二酸化炭素の観測,























