左のグラフは1965年から2013年までのエネルギー消費とGDPの推移です。この半世紀で7.5倍に大きく増えているのが黄色で示されている業務他部門の消費量です。業務他部門というのは、オフィスや店舗や各種のサービスを提供する事業所などのことですが、事務所・ビル、デパート、卸小売業、飲食店、学校、ホテル・旅館、病院、劇場・娯楽場、その他サービス(福祉施設など)の9業種に分けられている中で、現在では事務所・ビルが一番大きな割合を占めています。
産業分野に比べてみると対応が遅れていると言われるオフィスの省エネですが、最近は事業者の意識も高まり、前回ご紹介したLEDへの転換など、ある程度の資金を投入して、設備や機器類の見直しをする傾向が増えてきました。様々な取り組みがある中で、今回、注目したいのは、機器の買い替えです。どのような種類の電気機器であっても、古い製品と新しい製品では消費電力に大きな差がありますが、近年は節電のための機能が加えられていたり、内蔵する部品の性能や消費電力が技術革新によって常に改善されているため、古い設備や装置を新しくするだけでも、大きな省エネ効果が見込めるケースが増えています。
その一例として挙げられるのが業務用エアコンです。一般的なオフィスビルの場合、電力消費率の約半分を空調設備が占めています。業務用の空調機器は10年が買い替えの目安といわれますが、実際はそれ以上の長期にわたって使われているケースが珍しくありません。ところが、業務用エアコン最大手のダイキン工業によると、15年前の機種を使い続けた場合と最新の機種では、年間の消費電力に5倍の開きがあるそうです。古いオフィスビルでも空調機器を最新の製品に入れ替えれば、電力の使用量が大幅に減ることは確実とのこと。(出典:スマートジャパン)
また、パソコンや複合機なども 5~6 年前と比べて消費電力が半減しており、久しぶりにOA機器を購入すると、立ち上がりが非常に早かったり、音が静かであることに驚かされた方も多いのではないでしょうか。(ちなみに複合機の場合は年間に消費する電力量がさほど多くないため、パソコンほどは買い替えの効果はない模様です。)
産業の省エネを支援し、エネルギー管理士試験なども実施している一般社団法人省エネルギーセンターでは、中小のビル・工場の「省エネ診断サービス」を無料で行っていますが、同センターの提案を検討して工事に踏み切った、特別養護老人ホーム「やすらぎの里」(新潟県)では、厳しい状況の下で補助金を活用しながら、空調をメーンにした改善で年間600万円超のコスト削減を達成したそうです。(詳しくはこちら)
省エネと聞くと、私達は日常の細やかな工夫と努力で現状のエネルギー消費量を抑えていくイメージを抱きがちですが、予算をかけて行うオフィスの省エネは、よりいっそうの大きな効果を求める「攻めの省エネ」といえるかもしれません。
「3%のコストダウンは難しいが、3割ならばすぐにできる」と言ったのは松下幸之助氏です。これは、「わずか3%のコストダウンをしようとすると、普通は現在の延長上での発想しか生まれず、なかなか成果が上がらないが、思い切って30%のコストダウン成功させようとすれば発想の転換を余儀なくされ、できないと思っていたようなことも実現できてしまう」という意味。この言葉を受けて、松下電器では製品を設計から見直し、コストダウンを実現しました。省エネの世界も根本的な発想の転換を求められているのかもしれませんね。
※出典:「環境を考える」「スマートジャパン」「一般財団法人省エネルギーセンター」
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