今回は名前を聞いたことがなくても写真を見たら誰もが見たことがある雑草です。実は昭和の初期に日本に入って来た帰化植物なんだって。意外に歴史は浅いんですね。
名前を知られていないけど誰もが見たことがある雑草
オオアレチノギク(大荒地野菊)は、キク科イズハハコ属の植物で、昭和初期に日本に帰化した南アメリカ原産の雑草です。
道路わきや荒地などで群生しているのがよく見られ、乾燥地でもよく育ち、高さ1~2mに成長します。植物体全体に柔らかい毛が密についています。
花の時期は7月〜10月ですが、空地や堤防などでも本当によく見かけるので、名前を聞いたことがない方でも、写真を見れば「ああ、これね」とひと目でわかるのではないでしょうか。
実は同じ南アメリカ原産で近縁種のアレチノギクという植物が明治時代に渡来し分布を拡大していましたが、その後、オオアレチノギクが入ってきたことで次第に勢力が弱まっていったようです。
オオアレチノギクはアレチノギクに似ていますが、アレチノギクよりも背丈が高くて大ぶりなのでそのような名前が付いたのだと思われます。
皆さんは見分けがつきますか?
実はオオアレチノギクにはほかにも間違えやすいよく似た植物があります。それはヒメムカシヨモギというキク科の植物でやはり外来種ですがこちらは北米原産です。
一番簡単な見分け方は花序の付き方で、ヒメムカシヨモギは花をつける枝が先の方に集まっているので全体的に頭でっかちのような形になります。
また葉の付き方もヒメムカシヨモギは規則正しく整列していますが、オオアレチノギクは一見不規則な感じがします。そしてオオアレチノギクのほうは葉先が上を向かず垂れているのも特徴とのことですが、個体差がありすぐには判別できないケースもあるようです。皆さんは見分けられますか?
(参考)オオアレチノギクとヒメムカシヨモギを見分けてみよう!
微妙に異なるオオアレチノギクとヒメムカシヨモギですが、どちらも外来生物法で要注意外来生物に指定されており、オオアレチノギクのほうは日本生態学会が定めた「日本の侵略的外来種ワースト100」にも入っています。
実は苦労が多い放浪という生き方
ある資料によれば植物には以下の3つの生存戦略があるそうです。
- 薄暗いあるいは栄養に乏しいような環境下でゆっくり生長するストレス耐性戦略
- 日光や養分が豊富な環境において他の植物に打ち勝って大きく生長する競争戦略
- 日光や養分を巡る種間競争は少ないが攪乱が頻繁に起きる不安定な環境で速やかに生長し,時折訪れる好適環境では爆発的に繁殖する攪乱依存戦略
雑草は典型的な攪乱依存戦略者でそんな生き方をする植物群を放浪種というそうですが、そのためには攪乱地(空地や造成地、災害後の土地などのように生態系ががらりと変わる環境)にいち早く到着して短期間に繁殖しなければなりません。
単独で繁殖でき(自家受粉)多くの種子を風で飛ばすオオアレチノギクやヒメムカシヨモギはその意味で放浪種の大成功者なのだとか。
ただし放浪種はそこに他種が入り込んでくれば新たな攪乱地を求めて移動していかなければなりません。雑草は雑草で苦労があるんですね。
ちなみに毎回次回の記事を決める編集会議でオオアレチノギクを提案したところ、一同が異様に盛り上がったのでびっくり。
毎回編集会議に参加している当社の沢田元一郎会長によれば「大荒れ血の菊」という漢字を想像したそうです。全員がその場でネット検索をして「ああ、これねー」という結論になったのは言うまでもありません(笑)
(ミカドONLINE編集部)
出典/参考記事:オオアレチノギク イベントレポート: 長居植物園案内(9月) オオアレチノギクとヒメムカシヨモギを見分けてみよう! など