当社の表伸也がエネルギーマネジメントについての記事をお届けします。第4回は「省エネルギーの実践」についてです。皆さんは月々の電力使用量を表やグラフにしていますか?何ごとも現状をひと目で確認して直感的に把握できる「見える化」がとても重要なんです。(※このシリーズの全記事はこちら)
表伸也(おもて しんや)/当社執行役員 工務部長
当社取締役環境・エネルギー本部長 上席エネルギーコンサルタント
エネルギー使用状況の見える化
まずは、なにはともあれエネルギーの使用状況の見える化が重要です。現状をしっかり把握することで、エネルギー使用に関する課題や対応策が明確となります。
デマンド監視装置やEMS(エネルギーマネジメントシステム)などのシステムを導入すると、比較的簡単に見える化が出来ますが投資コストがかかりますので、まずはEXCELなどに入力してグラフ化してみることをおすすめします。
ある事業所のグラフ化事例
例えば、東北電力ですと以下のような電気ご使用のお知らせが毎月届きますので、契約電力[kW]と使用電力量[kWh]を毎月EXCELに入力して、電力使用状況の見える化を図ると良いでしょう。
基本料金(契約電力)の増加防止策
基本料金は前回書いたとおり、使う可能性のある最大電力値(最大需要電力[kW])で決まります。したがって、電力の使用を計画的に行い、できるだけ使用電力[kW]のピーク高くしないようにする(電力の使用を平準化する)ことが重要です。例えば工場の場合ですと、
操業度の変化を少なくする
- 受注したので急いで生産して、以降はのんびり⇒×
- 納期を考慮した計画的な生産計画が必要
- 受注生産の場合も、需要予測を元に一部部品在庫化
- お客様とのコミュニケーションを密にし、出来るだけ早い時期に発注してもらい、納期までの時間を長期化する
生産機械の一時的な使用輻輳状態を少なくする
- 生産計画を厳密に行い、電力消費の大きい生産設備は同時に使用せず、時間をずらして稼働させる。
- 生産設備毎の電力消費状況の把握が必要
といった施策になります。
また、前述のデマンド監視装置やEMS(エネルギーマネジメントシステム)を導入することで、より人手をかけずに緻密に管理することが出来ます。例えば、未来工業の電力マネージャーでは、1分ごとに電力値を常時測定しており、設定値を超えそうになると3色灯やメールで警告を出してくれます。さらに、警告が発生した場合は事前に設定しておいた空調設備を自動で停止して、最大電力値が設定値を超えないようにすることが出来ます。データはクラウドに自動で保存されており、ブラウザで所定のサイトにアクセスすることで、測定値やそのグラフを常時どこにいても確認することが出来ます。
電力量[kWh]料金の削減策
電力量[kWh]料金は前回書いたとおり、電力の使用量に比例して課金されます。したがって電力量料金の削減策としては、電力の使用状況を精査し、無駄に使用されている電力をカットすることになります。例えば工場ですと、
操業停止中の待機電力の削減
- 操業停止中に電力を使用している機器を精査する
- 動作している機器を確認し、本当に必要な機器以外は停止する 等
操業中の無駄な電力使用を削減
- 操業中に電力を使用している機器を精査する
- 圧縮空気のエア漏れの確認
- 給排気ファンの不要な運転削減やインバータ化
- 不要な照明や空調機器の停止 等
ということになります。以下のグラフは、当社で測定したある工場の操業停止中(土曜日0時)のエアコンプレッサの電力測定値です。見ると分かる通り、操業停止中にもかかわらず電源が入りっぱなしとなっており、且つ圧縮空気の配管からエア漏れしているため、定期的に圧縮動作が発生しています。この消費電力は生産には全く役立たない、無駄な電力使用量(コスト)になってしまっているというわけです。これは、経営上の無駄なコストを増加させるとともに地球温暖化を促進させている要因の一つです。これに気づきさえすれば、操業停止中のエアコンプレッサの停止や、圧縮空気配管のエア漏れの修理、などの対策が打てることになります。ただ、この例のように測定してみないとわからないことも多いですので、定期的に専門家の診断を受診してみるのも良いかと思います。
とある工場の操業停止中のエアコンプレッサの使用電力グラフ
(次回につづく)
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表伸也(おもて しんや)
ミカド電装商事(株)取締役環境・エネルギー本部長 上席エネルギーコンサルタント
大手通信会社のエネルギー管理士として、大規模データセンター等のエネルギー管理業務に長年携わり、数多くの電力設備・空調設備等の省エネ実績を持つ。近年では、太陽光発電設備の設計・施工等創エネに関する実績も豊富な、エネルギーマネジメントのエキスパートである。2018年より環境省環境カウンセラー。
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