(82)空気から「水」が手に入る?ーノーベル賞・北川教授が語る新素材「MOF」の可能性

    みかドン ミカどん

    2025年、京都大学の北川進特別教授がノーベル化学賞を受賞されました。
    受賞の決め手となったのは、北川教授が開発した「MOF(金属有機構造体)」という新材料。 「当初は研究室で、わずか10ミリグラム程度しか作れなかった」と振り返るこの素材が、私たちの未来を大きく変えようとしています。 今回は、世界が熱視線を送る「MOF」が拓く新しい暮らしの形をのぞいてみましょう。

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    金属と有機物が作る、ミクロのジャングルジム

    MOFのイメージ(画像:chemical design site DAVY

    MOF(Metal-organic framework)は金属イオンと有機分子がブロックのように規則正しく繋がった構造体です。その見た目はまるで、分子レベルのジャングルジムのようです。特徴としては、

    • 内部に「多孔質(たこうしつ)と呼ばれる、名のレベルの極めて微細な隙間が無限にあること
    • その隙間の大きさを設計することで、特定の物質(分子)だけ正確にキャッチできること
    • 非常に効率よく、特定の物質を選別・吸着・抽出できる 

    などが挙げられます。

    北川教授は、この特性を活かせば、混ざり合った物質の中から必要なものだけを「低エネルギー」で抽出できると述べています。
    今までなら熱をかけるような膨大なエネルギーが必要だった製造工程が、素材の力だけで解決できるようになる。そんな製造現場における省エネの概念を根底から覆す可能性を秘めているのです。

    空気から資源を取り出す?期待される驚きの用途


    「空気は目に見えない金である」そんな言葉も残されている北川教授。講演の中で今後の期待として挙げられたのが、空気中から水の分子を捕まえて抽出する技術やなどです。

    蛇口をひねるのではなく、空気から直接水を得る。ドラえもんの世界の話のように聞こえますが、MOFの技術があれば現実味を帯びてきます。量産化が進んだことで、将来的には原子力発電所の冷却水処理など、より難度の高い環境対策への応用も視野に入っています。
    そんなことまでできるのか?という驚きが、着々と実用化に近づいています。

    51のスタートアップが挑む、社会実装への道のり

    現在、北川教授が顧問を務める「Atomis(アトミス)」をはじめ、世界はすでに51のスタートアップ企業が立ち上がり、MOFの量産化に挑戦しています。
    北川教授は、実用化を担う研究者に対し「我々科学者も驚くような強い好奇心を大切にしてほしい」とメッセージを送っています。同時に、企業の経営者に対しては「基礎研究が実を結ぶには長い時間がかかる」とし、研究者を長い目でサポートすることの重要性を説いています。

    MOFは、まだ私たちの日常で直接目にする機会は少ないかもしれません。しかし、10ミリグラムの研究室の成果が、産業界を巻き込んだ量産品へと進化しようとしています。
    実用化される日が来るのが待ち遠しいですね。

    (ミカドONLINE 編集部)

    参考/引用記事:ノーベル賞の北川進氏「MOF実用化、多くの分野で」,PCP/MOFの世界へ,北川進氏が語った「空気資源」