生き物に学ぶ「省エネの達人」たち:柔らかい電池?電気うなぎから学ぶ「ゼリー電池」の可能性(2)

    「電池」といったら大半の人が固くて筒状になった重たいものを思い浮かべますよね。しかし、その常識を覆すような研究が進められています。

    柔らかく伸びて、傷ついても回復し、電気を生み出す。電気うなぎから着想を得た「ゼリー電池」なるものがあるそうです。

    電気うなぎ(画像:photo AC)

    生き物の体の仕組みが未来の医療機器やウェアラブル機器の電源を変えるかもしれません。今回はとても理にかなったゼリー電池について紹介します。

    「生体電池」を持つ電気うなぎ

    電気うなぎは、その名の通り電気を発する魚として知られています。
    最大で数百ボルト級の高い電圧を生み出し、獲物を痺れさせたり、身を守ったりすることができます。

    しかし、この電気は単純に体に溜まっているわけではないようです。電気うなぎの体内には、筋肉細胞が変化してできた発電細胞がずらりと並んでいて、それぞれが小さな電気のように動いています。

    一つひとつの細胞が生み出す電圧は小さくても、それが何千個も積み重なることで、大きな電圧になる。つまり電気うなぎは、自然が作った超高性能な多層電源システムを体に持っているのです。

    研究者たちは、この仕組みに注目しました。もし同じようにイオンの差を使って電気を生む柔らかい材料が作れたら、これまでにない新しい電源になる!そんなひらめきからゼリー電池の研究が進んでいきました。

    伸びても使える柔らかい電源

    ゼリー電池の主な材料はハイドロゲルと呼ばれる、水をたっぷり含んだ柔らかい素材です。傷の治療に使うゲルにも近い性質を持ち、生体との相性が良いことから、医療やウェアラブル分野で注目されてきました。

    身近なものだと熱さまシートやフェイスパックに利用されています。

    青い部分がハイドロゲル素材(画像:photoAC)

    これまで、「柔らかくてよく伸びる」と「電気を流しやすい」を両立させるのが難しいという課題がありました。そこでケンブリッジ大学の研究チームは、電気うなぎの仕組みに着想を得て、イオンの濃度差で電気を生むハイドロゲルを開発しました。

    この素材は、元の長さの10倍以上に引き伸ばしても導電性を保ち、強く押しても形を保ちます。従来の電池には難しかった曲げ伸ばしが可能になったのです。

    医療やウェアラブルを支える存在に

    この技術が期待されている理由は、珍しいからという点だけではありません。これまでの硬い電池が苦手だった場面で役立つ可能性があるからです。

    例えば皮膚に貼るセンサー、体の動きに合わせて変形する機器、脳や体内に埋め込む医療デバイス。ゼリー電池は柔らかく、生体に近い性質を持ち、金属を使わない設計も可能です。研究段階では、てんかん治療向けデバイスや、脳内で薬を届ける機器への応用も期待されています。

    しかし、現時点では課題も残されています。電気を溜められる量や長期安定性の面で課題もあります。それでも、これまでにない強みを持つ電源として注目されています。

    生き物の仕組みが未来の技術を変える

    電気うなぎのすごさは、強い電気を生み出せることだけではありません。必要な時に、体の仕組みそのものを使って効率よく電気を生み出していることにあります。
    生き物ならではの合理的な設計があるのです。

    これまでの技術は硬くて丈夫であることを重視して進化してきました。しかし、これからは柔らかく馴染むことが価値になる場面も増えていくのかもしれません。

    参考:脳に埋め込む「ゼリー電池」、デンキウナギにヒント-日本経済新聞ゼリー電池。10倍に引き伸ばしても導電性そのまま、デンキウナギから着想【研究紹介】生体を超える工学:電気ウナギの「発電器官」を完全複製するハイドロゲルバッテリーの全貌