(88)AIを動かすのは、空を飛んでいたエンジン?

    みかドン ミカどん

    すっかり私たちの生活に馴染みつつあるAI。高校生の間ではChatGPTを友達のようにチャッピーと呼ぶこともあるのだとか。しかし、データセンターでは、静かに電力問題が起こっています。

    ジェットエンジン(画像:photo AC)

    生成AIの普及により、データセンターでは、これまで以上に大きな電力が必要とされるようになっています。
    電力不足を補う即戦力の電源として、今、意外なものが注目されています。
    それが、航空機で使用されていたジェットエンジンです。

    飛行機用エンジンを、発電設備として再利用

    アメリカ・ミズーリ州に本社を置く「ProEnergy(プロエナジー)」は、航空機で使用されていたジェットエンジンを改造し、データセンター向けの発電設備として提供しています。

    使用されているのは、GE(ゼネラル・エレクトリック)製の「CF6-80C2」というエンジン。もともとは、ボーイング767向けに開発された大型ジェットエンジンです。

    このエンジンのコア部分を活用し、天然ガスを燃料とする発電設備として再構成することで、データセンターに直接電力を供給できるようにしています。

    発電能力は最大48メガワット。これは、アメリカの一般家庭およそ3万世帯分に相当する規模だとされています。単一のエンジンからこれほどの電力が生み出されるのは、驚異的ですね。
    すでに21基のガスタービンを2つのデータセンタープロジェクト向けに販売していると報じられています。

    これらは恒久的な電源というよりは、5~7年間を支えるつなぎの電源として使われる計画です。

    大量の電力が必要な背景

    近年のAIは、単純な文章生成だけでなく、画像生成や動画生成まで行うようになりました。こうした処理には大量の計算が必要となり、それに伴って電力消費も増加しています。

    特に動画生成AIは、文章生成AI以上に大きな計算資源を必要とすると言われています。映像は多数のフレームを連続的に生成する必要があり、動きや光、奥行きなども同時に処理しなければならないためです。

    OpenAIが発表した動画生成AI「Sora」も、映像生成で注目を集めました。一方で、生成AI全体をめぐっては、膨大なGPUや電力消費、冷却設備などの負荷が課題となっています。

    新しいデータセンターを建設しても、必要な電力をすぐに確保できるとは限りません。特に、電力網への接続や送電設備の整備には時間がかかるため、データセンター側が電力をどう確保するかという課題に直面するケースが出ています。

    AIというと、どこか“デジタルだけの世界”に見えるかもしれません。しかし実際には、その裏側で必要になるのは、非常に現実的なインフラです。

    発電所、送電網、冷却設備、燃料など、AIの進化は、物理的な基盤の上に成り立っているのです。

    日本でもAI需要に伴って、データセンターの建設が行われています。電力不足の問題は他人事ではないかもしれません。

    最先端を支える、既存技術の転用

    航空機用のエンジンが救世主となっている理由は、単に余っているからではありません。そこには既存技術だからこそ成し遂げられる合理性が存在します。

    特筆すべきは「スピード感」です。大型発電所を新設するには長い歳月を要しますが、ジェットエンジンを用いることで短期間でデータセンター専用の電源を構築することが可能です。

    上空を長時間飛び続けるために開発された背景を考えると、安全性や耐久性においても信頼感があります。24時間365日の稼働が条件であるAIインフラにとって、堅牢な選択肢と言えるでしょう。

    最先端を走るAIインフラを、実は既存技術の転用が支えているという、興味深い構図です。AIの進化は、ソフトウェアだけで進むわけではありません。

    課題と同時に新たな工夫も生まれているのですね。

    参考:GIZMODO-AIデータセンターの電力不足に現れた救世主は、使用済みのジェットエンジン?,AI向け発電、ジェットエンジン転用に熱視線,AIデータセンターは電力需要を満たすために“ジェットエンジン”をも利用する,

    (ミカドONLINE編集部)