これでなっとく!エネルギー(13)最近よく聞く「ZEB(ゼブ)」ってなに?

    みかドン ミカどん

    東京の中央区が一定面積以上の新しい建築物にZEB・ZEHを実質義務化しました。ZEH(ゼッチ)という言葉は以前より浸透してきたと思いますが、はて?ZEBとは?今回はZEBについて解説します。

    ZEBはZEHのビルディング版

    (画像:環境省「ZEBポータル」

    東京の中央区が一定面積以上の新しい建築物にZEB・ZEHを実質義務化しました。

    参考:東京・中央区/新築時にZEB・ZEH実質義務化、敷地3000平米以上など対象 -日刊建設工業新聞(2025.2.14)

    ZEH(ゼッチ)は言葉として浸透してきた感がありますが、これはNet Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略で、高い断熱性能や省エネルギー設備の導入により、エネルギーの収支をゼロ以下にすることを目指した住宅を指します。

    一方、それによく似た言葉でZEB(ゼブ)という用語も時折目にするようになりました。

    ZEBは文字を見ておわかりの通りZEHのビルディング版です。こちらはNet Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことです。

    とはいえ、大勢の人が働いてエネルギー消費も多い(たとえば)オフィスビルのような建物で、それは本当に可能なのか?という疑問も生まれます。それについて環境省のサイトでは以下のように説明されています。

    建物の中では人が活動しているため、エネルギー消費量を完全にゼロにすることはできませんが、省エネによって使うエネルギーをへらし、創エネによって使う分のエネルギーをつくることで、エネルギー消費量を正味(ネット)でゼロにすることができます。

    (環境省:ZEBポータル

    ZEBは削減率に応じて4種類、補助金も出ます

    (画像:環境省「ZEBポータル」

    環境省は、2050年までのカーボンニュートラルの実現に向けて、建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業を推進しており、より多くの事業者が取り組みやすいように、ZEBをエネルギー削減率に応じて以下の4段階に分け、基準を満たす建築物にはそれぞれに補助金を出しています。

    • ZEB(ゼブ
      省エネ(50%以上)+創エネで100%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現している建物
      👉年間の一次エネルギー消費量が実質ゼロまたはマイナスの建物
    • Nearly ZEB(ニアリーゼブ)
      省エネ(50%以上)+創エネで75%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現している建物
      👉再生可能エネルギーにより年間の一次エネルギー消費量をゼロに近づけた、ZEBに限りなく近い建物
    • ZEB Ready(ゼブレディ)
      省エネで基準一次エネルギー消費量から50%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現している建物
      👉外皮の高断熱化や高効率な省エネルギー設備がある、ZEBを見据えた先進的な建物
    • ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)
      延べ面積10000㎡以上で用途ごとに規定した一次エネルギー消費量の削減を実現し更なる省エネに向けた未評価技術(WEBPROにおいて現時点で評価されていない技術)を導入している建物(事務所等、学校等、工場等:40%、ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等:30%)
      👉外皮の高性能化や高効率な省エネルギー設備に加え、省エネルギーの実現に向けて措置を講じた、延べ面積が1万㎡以上の、ZEB Readyを見据えた建物

    (参考)ゼロエネルギー化って本当にできるの? | 環境省「ZEB PORTAL – ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ゼブ)ポータル」

    これらの割合は従来の建築物と比較して算出される数値で、補助対象は本工事費、機械器具費などの工事費や設備費、業務費などの経費です。

    令和6年度の環境省「ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業」

    延べ面積補助率(新築建築物)補助率(既存建築物)
    2,000㎡未満ZEB 1/2
    ニアリー ZEB 1/3
    ZEB レディ対象外
    ZEB 2/3
    ニアリー ZEB 2/3
    ZEB レディ 対象外
    2,000㎡〜10,000㎡ZEB 1/2
    ニアリー ZEB 1/3
    ZEB レディ 1/4
    ZEB 2/3
    ニアリー ZEB 2/3
    ZEB レディ 2/3
    10,000㎡以上ZEB 1/2
    ニアリー ZEB 1/3
    ZEB レディ1/4
    ZEB オリエンテッド 1/4
    ZEB 2/3
    ニアリー ZEB 2/3
    ZEB レディ 2/3
    ZEB オリエンテッド 2/3

    ZEB オリエンテッドの「オリエンテッド」とは?

    余談ですが、オリエントは「東方」や「中近東」を指している言葉なので「ZEB オリエンテッド」という用語に違和感を持つ方も多いと思います。

    オリエントには「正しい方向を向く」「方向を定める」という意味もあり、これは元々のオリエントの語源であるラテン語の「oriri(昇る)」が「太陽が昇る場所=東」に変化する過程で付け加えられた動詞になります。(新入社員や新入生などに行われるオリエンテーションも目的は「方向づけ」ですよね。)

    つまりZEB オリエンテッドは「完璧なZEBには至らないけれど明確にZEBを指向している建物」と言えそうです。

    実際にZEB認証を取得した建築物の一例

    生長の家“森の中のオフィス”(ZEB)

    日本で初めてZEBを実現したのは2013年に竣工した「生長の家“森の中のオフィス”」です。この建物は清水建設が手掛け、日本におけるZEBの先駆けとして注目を集めました。

    参考:森の中のオフィス – 宗教法人 生長の家 公式サイト~日本初のZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)、CASBEEの過去最高点を取得~
    参考:日本初のZEB(ゼロ・エネルギービル)生長の家 “森の中のオフィス” 竣工 | History | Our Heritage | 清水建設

    この建物は以下の工夫でエネルギー収支「プラス5パーセント」を実現しています。

    ①自然エネルギーを利用した、エネルギー使用量の削減
    通風、自然光、太陽熱などの自然エネルギーを利用して、エネルギー使用量の削減(削減「-45%」)

    ②太陽光発電やバイオマス発電の利用
    “マイクログリッド”と呼ばれる小規模電力ネットワークによって、太陽光とバイオマスによる発電、蓄電池を適切に制御して、電力を供給(創エネ「+55%」)

    ちなみに日本におけるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の認証制度が始まったのは、生長の家“森の中のオフィス”完成の翌年(2014年)からです。構想自体は2003年スタートということですので、まだZEBという言葉も発想もない、かなり早い段階から計画されていたようです。

    東海道本線大船・藤沢間村岡新駅(仮称)(ZEB レディ)

    2032年の開業を目指す村上新駅(仮称)は65%の削減率を達成できる工事計画が認められ、2024年12月13日付で「ZEBレディ」を取得しています。これは駅舎のZEB認証としては国内初とのことです。

    特徴は①LED照明や床断熱の採用、②自然換気や自然採光の採用でエネルギーの消費を減らすことです。(再生可能エネルギーの導入はないようです)

    宮城県のZEB認証施設

    (画像:環境省「ZEBリーディング・オーナー」PDFより編集)

    ZEBシリーズの各認証を取得した団体名は、環境共創イニシアチブの検索システムで調べることができます。(実績報告を行っている団体のみ)

    ZEBリーディング・オーナー一覧(オーナー名で検索) | SII 一般社団法人 環境共創イニシアチブ

    それによると私たちの宮城県を「オーナー所在地」とする建築物は現時点(2025.2.17)で8団体9施設が登録されています。同サイトでは各団体の導入計画も閲覧できますので以下にPDFへのリンクを掲載しておきます。

    検索結果はオーナーの所在地での区分ですので、これ以外にも、他県に本社がある団体が宮城県に建設した施設などがほかにあるのかもしれませんが、まずはわかる分だけを掲載いたしました。

    ZEBと突然言われてもイメージがつかめないと思いますが、実際の計画をご覧になるとより具体的なイメージがつかめるのではないかと思います。皆様のご参考になれば幸いです。

    (ミカドONLINE編集部)


    引用・参考 環境省「ZEB PORTAL – ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ゼブ)ポータル」 【令和6年度】ZEB(ゼブ)導入に活用できる9つの補助金 – トレンド&データ | 未来図(ミライズ)   など