捨てずに発電!!なんでも発電!!(1)黒霧-クロキリでトップを走る焼酎最大手「霧島酒造」が取り組むサツマイモ発電!

     

    みかドン ミカどん

    今回から従来は捨てられていた廃棄物等を活かし、新たなエネルギー資源として活用している企業や自治体の取り組みをご紹介します!第1回は「黒霧島」「白霧島」で有名な焼酎の最大手霧島酒造さん(宮崎県)が取り組むサツマイモ発電です!

    芋焼酎製造で生じる焼酎かすは1日あたり約850トン!

    (写真:Think都城

    宮崎県都城市に本社を置く霧島酒造は、2014年からサツイマイモ発電による売電事業を行っています。

    霧島酒造のサツマイモ発電は、焼酎かすや原料となるサツマイモの芋くずからバイオガス(メタンガス)を発生させて、そのガスを燃料にバイオガスエンジン発電機を回す方式です。発電した電気は九州電力に売電され、2019年度の実績では約2億5000万円の売電収入が得られています。(1kWh当たり税抜39円)

    黒麹の使用や業界でタブー視されていた「黒」をラベルに使うなど、斬新な開発と販促で「黒霧島」が大ヒットしたのが2000年前半。それ以来同社の焼酎製造は拡大の一途をたどりますが、それに伴って大きな課題になったのが、膨大に増え続ける焼酎かすや芋くずの問題でした。

    工場で生じる焼酎かすはすべての工場の合計で1日あたり約850トン(最大1200トン)、8月~12月に行われている芋の選別時に生じる芋くずは1日あたり約15トン。

    事業規模が今ほどでなかった時代は、製造工程で発生する焼酎かすを畑にまいて肥料として再利用していましたが、2003年の廃棄物処理法改正により、焼酎かすを農地にまくと不法投棄と見なされるようになってしまいました。

    そしてこれだけ大量の食品残渣を受け入れてくれる産業廃棄物業者もいませんでした。

    最初はボイラーのためのバイオ燃料からスタート

    (写真:Business Insider

    霧島酒造が焼酎かすをエネルギー源として再利用するプランに取り組み始めたのは2002年のことです。しかし最初から発電を目指していたわけではありません。

    SDGs(2015年国連採択)よりも東日本大震災(2011年)よりもずっと前に、廃棄物のエネルギー資源化に着手されていることに驚きますが、日本経済新聞のこちらの記事によるときっかけはやはり産業廃棄物に関する法改正だったようです。

    試行錯誤の末に考えられたのが焼酎かすを発酵させて得られるバイオガスの活用でした。炭水化物、脂肪、蛋白質等の有機物は微生物の力でバイオガス(メタンガス)を発生させることができます。そのガスをボイラーの燃料として使うことにしたのです。それなら大量の焼酎かすとサツマイモの芋くずを捨てずに有効活用できます。

    この計画に協力したのは鹿島建設です。鹿島建設はプラントの共同開発や建設だけでなく微生物の選定にも力を貸しました。

    実はメタンガスを発酵させる一般的なメタン菌は低温で活発に活動しますが、製造工程で出る焼酎かすは取り出し時点で100度近くもあります。ですが鹿島建設がフランスの海底火山で見つけて来た高温に強いメタン菌を使うことで菌の問題もクリアできました。

    そして2006年、ついにバイオガスプラントが完成し、プラントで生成されたバイオガスはまず焼酎粕を乾燥させるためのボイラー燃料として使用が開始されたのです。このバイオガスがやがてサツマイモ発電に活かされることになりました。

    余剰メタンガスで売電事業を開始

    敷地内のプラントで作られたバイオガス(以下、メタンガス)は、やがて用途を拡大して焼酎製造のボイラー燃料としても利用が開始されました(2012年)。最近のデータではこれによって都市ガスの使用量が抑えられ、年間約1億2000万円分のコスト削減につながっているそうです(2020(令和2)年度実績)。

    しかしその当時はまだ使い切れていない余剰ガスがたくさんありました。メタンガスは24時間発生し続けますが、工場は24時間稼働ではないため夜間のガスは捨てざるを得ません。ガスの貯蔵タンクはあくまでも一時的な貯留であり、バイオガスプラントはリアルタイムでガスを使うのが前提だったからです。

    そのムダを解決したのがサツマイモ発電でした。

    2012年から固定価格買取制度(FIT)が施行され、再生可能エネルギーで発電された電気を電力会社に売電する制度が確立しました。国は再エネ普及のため買取価格を高く設定し20年間の価格維持を保証しました。

    そこで霧島酒造は約13億5000万円を投じて3基で合計出力1905kWとなるバイオガスエンジン発電機を導入。そしてこの新しいしくみを「サツマイモ発電」と名付けて、2014年から売電事業を開始したのです。

    この発電で得られる電気は年間850万kWhで、これは約2400世帯分の1年間の消費電力に相当するそうです。それによって2億円を超える売電収入が得られたことは前述のとおりです。

    資源循環型の事業モデル

    (写真:Business Insider

    この記事を書くにあたり参考にさせていただいた「さつまいも発電、さつまいもEV …。「黒霧島」で知られる霧島酒造の超ハイテク工場に潜入してきた | Business Insider Japan」によれば、著者の加藤肇さんは霧島酒造の工場を見学して規模の大きさと近代的な設備に驚いたそうです。

    少し調べてみると霧島酒造は酒造りの常識だった杜氏を昭和の半ばという早い時期に廃止して製造工程の近代化を進めたり、黒霧島が好調と見るや全ての経営資源を投入するなど、思い切った施策が持ち味のようです。

    そんな同社が今進めているのが、持続可能な焼酎造りに向けて『KIRISHIMA SATSUMAIMO CYCLE~さつまいもを、エネルギーに。~』と名付けられたビジョンの実現です。

    『KIRISHIMA SATSUMAIMO CYCLE~さつまいもを、エネルギーに。~』の実現に向けて 『霧島環境アクション2030』を策定 | 新着情報 | 霧島酒造株式会社

    実現のためのアクションプランでは「2030年度までの工場・事務所のCO₂排出量実質ゼロ実現」「2030年度までに全社用車の電動化」など攻めた目標設定になっていますが、現在は年間総燃料の60%がメタンガスで補われ、結果的に合計約4500トンのCO2を削減しているそうなので、もしかしたら手が届く目標なのかもしれません。

    霧島酒造のバイオプラントで生成されたメタンガスは工場内のボイラーやバイオガスエンジン発電機の燃料に使われ、残った汚泥は肥料にリサイクルされて地域の畑に帰り、液体は基準値まできれいに浄化されて排水されます。

    リサイクルされた肥料が再びサツマイモ栽培に使われたら、それはまさに資源循環型の事業スタイルですね。同社の「クロキリ」は発売から20年を迎える焼酎界のトップランナーですが、霧島酒造は資源活用の面でも先頭を走っていると言えそうです。

    (ミカドONLINE編集部)