単位の歴史(14)~伊達藩62万石の「石(こく)」ってどれぐらいのお米?~(追加:そしていくら?)

    1石(こく)は大人ひとりが1年間に食べるお米

    江戸時代(文久3年)の記録によれば、大名の石高(こくだか)ベスト3は
    1位・・・加賀藩 120万石
    2位・・・薩摩藩 72万8000石
    3位・・・仙台藩 62万石
    だそうです。

    私達の宮城県は全国ランキングの第三位なのでなんとなく晴れがましい気持ちになりますが、石高というのは領地から穫れる米の収量を体積で表したもので、1は10斗(と)ですから米の量のイメージとしては一斗缶の10個分(約180リットル)ということになります。

    これを米の重さに換算すると約150キロです。当時の年貢米は玄米で納められていたので、今の時代に置き換えると、30キロの玄米が5個分ということになりますね。

    石(こく)は1合(180ml)→1升(1.8リットル)→1斗(18リットル)と10倍ずつ増えていく日本の古い単位の延長上にあるものですが、都合のよいことに大人1人が1年間に食べるお米の量とほぼ同じなのです。

    そのため一石兵一人が一年に食べる量とされて、軍事動員力を示す石高制の基礎単位としてつかわれてきました。

    つまり昔の日本では、領地の面積ではなくそこから穫れるお米の量で藩や大名がランク付けされて、政治にも活用されていたわけです。この考えが導入されたのは豊臣秀吉の太閤検地からですが、実際には兵力から石高を逆算したり、米があまり穫れなくても貿易で成り立っているような藩は利益から按分されるなどの例外もあったようです。

    大名の石高の査定のベースは秀吉の太閤検地

    石という単位は中国から入ってきた単位です。古い中国では「石」をセキと読んで重さを表しました。体積の単位はこれと別に「斗」の10倍の「斛」(コク、)がありましたが、なぜかその通りには伝わらず、日本では「石」をコクと呼んで体積を示すようになりました。

    土地の価値を石高で表す石高制を最初に導入したのは豊臣秀吉です。秀吉はそれまで自己申告制でバラバラだった単位や基準を統一して、全国一斉に土地の調査を行い(太閤検地)それが江戸時代以降も大名の石高の基本となりました。

    その後の石高は大名と幕府が合意した査定額として、財力(兵力)や家の家格を表す序列の単位としても定着しましたが、実際に穫れたお米の量から判断されたわけではなく、「ここならこれぐらい穫れるだろう」という検地の査定によって格付けされているものです。

    そのため豊作や凶作による変動はなく、実勢をリアルに反映したものではありません。江戸時代にも何度か検地は行われ、一種の契約更改のような形で石高の見直しがあったようですが、毎年のように頻繁ではなかったため、実際の収量との乖離が見られることはあり、多くの藩では江戸後期には新田の開発により石高よりずっと多い米が採れたそうです。

    石高は大名の管理に便利な指標

    江戸時代は石高に応じて年貢米の量が決まり、五公五民という税率50%の大原則に則って(状況により変動)、収穫された米は村単位で領主に納税されていました。
    つまり62万石といっても、62万石のお米がすべて手に入るわけではなく、藩が徴収できた米はだいたいその半分ということになります。

    領地から上がってきた米は江戸や大阪に送られ、専門の業者を通じて換金されました。
    各藩の新田開発などで石高と実勢値が段々かけ離れてゆき、表向きの「石高」はやがて、建前上の数字になっていきましたが、(江戸幕府などの)中央集権組織にとって石高制度は非常にシンプルで扱いやすい指標でした。そのため幕府が行う江戸城修復や河川土木工事の負担も石高によって割合が決まり、加増や厳封・転封の単位としてもつかわれました。

    ちなみに伊達藩62万石の内、2万石は滋賀県と茨城県にあったそれぞれ1万石の飛び地です。これは関ケ原の戦いの功績によりあとから加増されたもので、これが幕末に至るまで仙台藩の基本的な石高となりました。仙台藩の飛び地だった東近江市にはいまも仙台藩の代官屋敷だった建物が現存するそうです。

    2022.1.25追記 1石のお米はいくら?

    みかドン ミカどんこの記事に対して「1石の値段も教えてほしい」というご質問をページ下のフォームからをよくいただくので、「1石の価格」についても調べてみました。

    諸説あるのですが、こちらのブログによれば豊臣政権時代の「1石」は約5万円国立国会図書館の検索サービスでは、江戸時代の「1石」は2万1280円から5万円5万2360円5万5500円と複数の回答が掲載されており、同サイトの調査では「何を基準にどう算出するかによって5万5500円から30万円までの開きがあるのでその中間の10数万円が妥当なのでは?」と書かれた書物もあるようです。また、こちらでは7万5000円という試算も。

    団体の信頼性や資料の正当性から考えると国立国会図書館の検索サービスが一番信用できそうですが、回答が複数あるので何が正しいのかよくわかりませんね。個人的には5万円台が妥当なのかな?という気もしますが、皆さんはいかがでしょうか。

    (ミカドONLINE編集部)


    出典/参考記事:水戸藩の石高について 昔の大名の石高は 江戸時代の大名は領地を持って○○藩○万石と表現されますが、 『石高』を理解すると歴史はもっと楽しい(初心者向け) 太閤検地 など