電子オルガンは、教会でよく見かけるパイプオルガンの代替え機として登場しました。長いパイプをたくさん使うパイプオルガンは、大型のものになるとその数が数千本にもなり搬送が困難だけでなく製作コストも膨大です。
そこで登場したのが、演奏者自身が発音リードにふいごで空気を送って音を出す足踏み式オルガンです。足踏み式オルガンは小型で安価であったことから広く普及しましたが、演奏会用としては音量も音色も貧弱でした。
現在の電子オルガンの先駆けとなったのは、ローレンス・ハモンドが開発・販売したハモンドオルガンです。
ハモンドはアメリカのエンジニアであり発明家です。それまでにも、時計などの分野でいくつかの発明をしていた彼は、「磁場で動く金属が電流を作りだす」という原理を用いて、電流の波を豊かな音色に変える方法を研究し、1934年に開発に成功、その5年後に「ノバコード」という名前で電子オルガンを発売しました。
ハモンドのオルガンは、永久磁石の差し込まれたコイルのそばで、トーンホイールというギザギザのついた歯車を回転させて、電磁誘導の原理で電流を起こし、その波を音に変えて真空管アンプで増幅させる仕組みです。
当初の目標が、安価にパイプオルガンの音をということであったため、ハモンドオルガンは、パイプオルガンを購入できない中小の教会でパイプオルガンの代わりに使われていましたが、1950年代からジャズを初めとする ポピュラーミュージックで盛んに使われるようになり、やがてロックにも多用されるようになりました。
近年では、さらに低コストで電子的な音の生成が可能になったため、ハモンドオルガンは1975年に製造を中止しましたが、空気感のある深い音色に人気があり、製造終了後40年以上経った今でもプレイヤーに愛され、中古品が世界中で売買されています。
私はハモンドオルガンというと、すぐにプロコル・ハルムの「青い影」を思い出します。誰でも一度はどこかで耳にしたことがあるあの音色を、以下の動画でお楽しみください。
画像出典:Wikiepedia、株式会社鈴木楽器製作所
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