世界で最初の防犯カメラは、1933年にイギリスのアマチュアカメラマンのノーベリによって発明された卵泥棒撮影カメラでした。これは誰かが卵を盗みに鶏舎に入ると、砂袋の重みでシャッターを切る原始的なものでしたが、ノーベリ氏はそのカメラで犯人を特定し、裁判に証拠写真として提出することに成功しました。
現在のような防犯カメラの日本での普及は、1968年に起こった三億円事件がきっかけです。この事件は、東京芝浦電気(現・東芝)社員のボーナスが、現金輸送車ごと奪われた強奪事件でした。これを機に、それまで手渡しだった給与支払いを銀行振り込みに変更する会社が増え、防犯カメラは1970年代にATMの防犯対策として浸透しました。しかし、この頃の監視カメラは、当時のテレビと同様に真空管が使われており、映像は白黒、画質も悪く、記録媒体は磁気テープでした。
防犯カメラはやがて、デパートなどの大型商業施設にも普及しましたが、暗闇では映らず、価格も高価なうえに、まだ「撮られる」ことへの世間の抵抗も強かったため、導入には慎重な議論が必要でした。その状況を一変させたのが、1995年の地下鉄サリン事件です。これ以後、監視カメラは、駅をはじめ、マンションやコンビニにも急速に広がり、価格が安価になったここ十数年で爆発的に普及しました。
防犯カメラの普及により警察の初動捜査も変化しました。今では現場での聞き込みよりも、まず、カメラの位置を確認するところからのスタートだそうです。私達が思い描くかつての刑事ドラマのような捜査スタイルも、今では様変わりしているようです。