(52) 高機能・低価格!トヨタ車のバイポーラ型電池はリチウムイオン電池の代替を目指す

    みかドン ミカどんトヨタが9月にワークショップ(見学会)を開催し、今まで非公開だった工場の一部を報道陣向けに公開しました。そこで大きな話題になったのが前回のギガキャスト工法と今回のバイポーラ型電池です。今回はバイポーラ型電池について解説をします。

    バイポーラ型電池とは?従来型とどこが違うの?

    (画像:WEB CARTOP

    今年(2023)の9月、トヨタが報道陣向けにワークショップを開き、今まで非公開としてきた貞宝工場(ていほうこうじょう、愛知県豊田市)や明知工場(みょうちこうじょう、愛知県みよし市)の内部を公開しました。

    これは同社のモノづくりへの姿勢と新技術をアピールするもので、前回掲載したギガキャストのほか、バイポーラ電池についても試作ラインで工程の一部が公開されました。

    (過去記事)驚きのギガキャスト工法!ミニカーと同じ方法で本物の車の車体をつくります

    バイポーラ(Bipolar:双極)型電池とは、正極と負極の2つの電極を併せ持った電池構造のことです。

    (画像:webCG

    従来型の車載電池は負極(金属箔)と正極(金属箔)の間に絶縁材を挟んだ薄いプレート状のセルを何枚も重ねて直列につないだものでした。

    それに対してバイポーラ型電池は負極材と正極材が一枚の金属箔の表と裏に塗布されている次世代電池です。小型化できて使用する部材も少なく、通電面積と電気抵抗の減少により大きな出力が得られるのが特長です。

    製造には高度な技術が必要ですが、逆にそこが日本の強みになると期待されており、トヨタが力を入れる背景もそこにあるのではないかと思われます。

    どの自動車メーカーもEVの電池をなんとかしたい

    チリのリチウム採掘場(画像:greenz

    現在、世界の自動車メーカーの間ではEV用の車載電池に関して熾烈な技術開発競争が行われています。それはEV車の価格の3〜4割を電池が占めているため、電池のコストを下げることが各社の喫緊の課題だからです。

    EV電池の主流はリチウムイオン電池ですがリチウムはレアメタルと呼ばれ、価格が大変高価です。さらに今の技術ではガソリンを燃やすよりもエネルギー密度が低く、寿命もガソリン車より短く、発火の危険があるので廃棄が難しいなど、車の駆動電池として使うにはいくつかの問題が残っています。

    また産出場所も豪州、チリ、アルゼンチン、中国の5か国でほぼ100%を占めるなど、採れる地域が非常に限られており、さらに鉱石からリチウムを取り出す精錬という工程では58%のシェアを中国が握っている(2019)ため、電池の生産が輸入相手先の国情や政策に左右されるという懸念もあります。

    (参考)リチウムラッシュのアメリカ “中国依存”脱却なるか|NHKおはBiz

    そこで世界の自動車メーカーは新しい技術や新しいサプライチェーンの構築、そしてリチウム以外の電池開発などにしのぎを削っているわけです。

    ※レアメタル・・・地球上の存在量が稀であったり技術やコスト面で抽出困難な金属のうち”安定供給の確保が政策的に重要(経済産業省)”とされている産業利用の多い非鉄金属

    トヨタのリチウム電池はバイポーラが本命だった?

    (画像:webCG

    そんな中、トヨタは2021年に発売した新型アクア(ハイブリッドカー)の車両駆動用電池として、豊田自動織機と共同開発したバイポーラ型ニッケル水素電池を世界で初めて搭載しました。

    それまでのアクアは従来構造のニッケル水素電池でしたが、これをバイポーラ型にすることで2倍の出力が得られ、加速が増してモーターだけで走行できる距離も伸びたそうです。

    トヨタは今までリチウムにはあまり積極的ではありませんでしたが、9月のワークショップでは、現在開発中であるバイポーラ型LFPリチウムイオン電池の工程の一部も公開されました。

    これはリチウムイオン電池でよく使われているいわゆる三元系(ニッケル、マンガン、コバルト)を正極活物質に使わず、安価なリン酸鉄リチウム(LFP)を採用したバイポーラ型の電池で、ハイブリッド車ではなくEVに適用される見込みです。

    リン酸鉄リチウム電池は三元系のリチウムイオン電池よりもエネルギー密度が低いため、三元系の電池よりも大きく重くなってしまうのが欠点ですが、それをバイポーラ型にすることで三元系並みのスペック・体積・重量に近づけ、価格を大幅に下げてEVの本格的な普及を目指すようです。

    同社のリン酸鉄リチウム電池は2026年から2017年の量産化を目指して準備が進められていますが、今までトヨタがリチウムイオン電池に消極的だったのはこれが本命だったからではないかと言われています。

    定置用鉛蓄電池でもバイポーラ型の試験が開始

    (画像:古河電工

    これまで車の駆動用電池について述べてきましたが、最後に定置用の鉛蓄電池でもバイポーラ型の開発が進んでいることをご紹介したいと思います。

    この電池に共同で取り組んでいるのは関電工、古河電工、古河電池の3社です。

    この3社は今年の5月に関電工技術研究所で性能確認試験を開始したことを発表しました。試験期間は2023年4月から2年間の予定です。

    3社は鉛蓄電池をバイポーラ型にすることで重量エネルギー密度を従来の約2倍に上げ、リチウムイオン電池の2分の1のコストでこの電池を提供し、電力貯蔵用蓄電池として再生可能エネルギーの有効活用につなげたいとしています。

    リチウムの価格はこの2年で10倍以上に高騰しました。リチウムイオン電池は小型・軽量・大容量という優れた特長を持つ電池ですが、EVや再生可能エネルギーなど様々な分野でその価格の高さが普及の障害になっており、この課題を解決するための研究が絶え間なく続けられています。


    参考/引用記事: トヨタが次世代電池の開発ラインを初公開。バイポーラ型LFP(リン酸鉄リチウム)の重要技術を見た | THE EV TIMES(EVタイムス) トヨタの製造現場で「今、起きている事」のすべて モノづくりワークショップで見た挑戦の果実 | 桃田健史の「クルマとエネルギー」の未来 | 東洋経済オンライン 第18回:本命はリチウムイオンバッテリーへの応用? トヨタが開発したバイポーラ電池のすごさ 【カーテク未来招来】 – webCG 量産は2026-27年。ここまできた! トヨタの次世代バイポーラ型LFPリチウムイオン電池開発ライン【トヨタモノづくりワークショップ2023_2】 | Motor-Fan[モーターファン] トヨタが量産試作ライン設置へ、「バイポーラ型LFP電池」とは?|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 関電工、古河電工、古河電池がバイポーラ型鉛蓄電池の性能確認試験を開始|2023|ニュースリリース|古河電気工業株式会社 など

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