気象:空の現象録(7)日本で相次ぐ水害、台風はどのように起こる?

    夏から秋にかけ発生する台風。今年は水害が多く、厄介な存在でもあります。そもそも台風はどのように生まれ、なぜあれほど強い風と雨をもたらすのでしょうか。鍵を握るのは、暖かい海から届く水蒸気と、水蒸気が雲になるときに放出される熱、そして地球の自転です。今回は、台風が生まれてから衰えるまでの仕組みを、エネルギーの流れにも注目しながら見ていきます。

    そもそも台風とは?

    台風は、暖かい海で発生する熱帯低気圧が発達し、風が強くなったものです。低気圧とは、周囲より気圧が低い場所を指します。気象庁では、北西太平洋または南シナ海にある熱帯低気圧のうち、最大風速が毎秒およそ17メートル以上になったものを台風と呼びます。

    暖かい海では、海水が蒸発して空気中に水蒸気が供給されます。水蒸気を含んだ空気が上昇すると、周囲の気圧が低くなるため膨らみ、温度が下がります。冷やされた水蒸気は小さな水滴に変わり、雲をつくります。

    こうしてできる、上空へ大きく育つ雲が「積乱雲」です。夏の空に見られる入道雲も積乱雲の一つです。風や大気の状態などの条件がそろうと、多数の積乱雲がまとまって大きな渦をつくり、熱帯低気圧、そして台風へと発達します。

    台風が生まれ、発達する5つの段階

    台風が生まれる仕組み

    暖かい海から大量の水蒸気が供給される

    台風の始まりは、海面から蒸発した水です。海面水温が高い熱帯の海では水蒸気が供給されやすく、暖かく湿った空気が上昇して積乱雲をつくります。ただし、海が暖かいだけで必ず台風が発生するわけではありません。周囲の風や大気の状態など、いくつもの条件が関係します。

    水蒸気が雲になり、熱を放出する

    上昇した空気は、高度が上がるにつれて冷やされます。すると水蒸気が凝結して小さな雲粒になり、その際に熱が放出されます。これは、水が蒸発するときに海から受け取っていたエネルギーが、大気へ戻されるためです。この熱で空気がさらに暖まり、上昇気流が強まりやすくなります。

    中心付近の気圧が下がり、空気が流れ込む

    上昇気流が続くと、地表付近では空気が不足し、周囲より気圧が低くなります。その不足を補うように、周囲から暖かく湿った空気が中心へ流れ込みます。流れ込んだ空気がまた上昇して積乱雲をつくり、水蒸気の凝結によって熱を放出します。こうして「上昇する→気圧が下がる→空気が流れ込む→さらに雲が発達する」という循環が生まれます。

    地球の自転が風の流れを渦に変える

    中心へ向かう風は一直線には進みません。地球の自転の影響による「コリオリの力」を受けるためです。北半球では、風は進行方向に対して右へ曲げられます。その結果、台風へ吹き込む風は上空から見ると反時計回りの渦になります。南半球では逆向きの時計回りです。

    コリオリの力は赤道では働かず、赤道から離れるほど大きくなります。このため、海が暖かくても赤道のごく近くでは、台風のような大きな渦が発達しにくいと考えられています。

    海からの供給が続くと渦がさらに発達する

    渦がまとまると、中心付近へより多くの暖かく湿った空気が集まり、積乱雲が次々に発達します。海から水蒸気が供給され、凝結による熱の放出が続くことで中心気圧が下がり、風も強くなっていきます。

    日本に近づく台風、その進路を決める風

    台風全体の進路を大きく左右するのは、周囲の広い範囲に吹く風や気圧配置です。

    赤道に近い海域では、台風は東から吹く風に流されて西へ進みやすくなります。その後、日本の南から東の海上に広がる太平洋高気圧の縁に沿って北上することがあります。

    さらに北へ進むと、上空を西から東へ吹く「偏西風」の影響を受け、速度を上げながら北東へ進むことがあります。日本はこうした進路に位置するため、台風が接近・上陸するのです。

    移動とともに変わる台風の勢力と性質

    台風は、海から水蒸気を受け取りながら勢力を保っています。海面水温の低い海域へ進むと、その供給が減り、弱まりやすくなります。上陸した場合も、海からの供給が減るうえ、陸地との摩擦によってエネルギーが失われるため、衰える傾向があります。

    こうして最大風速が台風の基準を下回ると、天気予報では「熱帯低気圧に変わった」と伝えられます。

    一方、北上する途中で寒気の影響を受けると、暖かい空気と冷たい空気の境に前線ができ、温帯低気圧へ変わることがあります。こちらは単に風が弱まったという意味ではなく、低気圧の構造や発達の仕組みが変わったことを表します。温帯低気圧は、暖かい空気と冷たい空気の温度差を利用して発達します。

    温帯低気圧へ変わる過程で強い風の範囲が広がったり、再び発達したりする場合もあります。また、熱帯低気圧に変わっても強い雨が降ることがあり、呼び方だけで風雨の強さを判断することはできません。

    台風から見える海と大気のつながり

    海の水が蒸発するときに受け取った熱は、水蒸気とともに運ばれ、雲の中で大気へ放出されます。この熱が台風の発達を支え、その一部が強い風を生むエネルギーになります。
    台風の仕組みは、海と空がつながり、エネルギーをやり取りしていることを教えてくれます。

    参考:気象庁「台風とは」,気象庁「台風の一生」,気象庁「台風に伴う風の特性」,気象庁「台風に伴う雨の特性」,気象庁「台風の大きさと強さ,気象庁「台風はどっちに渦をまいているの?」,JAMSTEC BASE「世界中の雲の生成を計算して、台風の動きを予測する!」,国立情報学研究所「デジタル台風:前線と台風」