【ヒストリー】48.コンデンサの歴史①~蓄電池よりも早く生まれた「静電気」を溜めるしくみ~

    コンデンサってなに?

    様々なコンデンサ(画像:株式会社村田製作所

    コンデンサは電気回路を構成する重要な電子部品のひとつで、電気を溜めたり放出したりします。わかりやすく書くと、電子的なダムのようなはたらきをする部品です。

    ダムが川に流す水の量を増減させたり一定に調節するように、電気回路ではコンデンサが電気をせき止めては流し、せき止めは流しを小刻みに繰り返し、それによって電圧を安定させたり、ノイズを除去したりします。

    また、コンデンサは、電気が交流の時は、通電し続けているのと同じ状態になり、周波数によって流れやすさが変わる性質を持つため、特定の周波数を寄り分けることもできます。

     

    静電気を溜めるために発明されたライデン瓶

    コンデンサの原型は、ドイツのクライストやオランダのミュッセンブルークがほぼ同時期(1745~46)に考案した、静電気を溜めるための実験装置です。ミュッセンブルークがオランダのライデン大学で発明したため、ライデン瓶と呼ばれています。

    日本では、徳川家重が9代将軍になったばかりで、アメリカもまだイギリスの植民地だった時代ですが、当然、世の中に「電気」はまだなく、科学者たちはもっぱら古くから知られている静電気のほうを研究していました。

    ちなみに、ボルタが蓄電池を発明するのはこのずっと後(55年後)です。つまりこの頃の”エネルギー開発”の最先端は、静電気の実用化だったのです。

    ライデン瓶(画像:Wikipedia)

    そういった時代に、静電気を溜める装置としてライデン瓶が考案されました。当時、摩擦で静電気をつくりだす装置はありましたが、溜める装置がなかったため、ライデン瓶はエネルギーの実験装置として広く普及しました。

    しくみとしては、①瓶の内側と外側に錫箔を貼ったガラス瓶に鎖の付いた真鍮のロッドを指して内側の錫箔と接触させます。②そして差したロッドの先に、摩擦起電機で帯電させた導体を触れさせて静電気を溜め、③その後、ロッドの先から溜まった静電気を一気に放電させるものです。

     

     

    ライデン瓶のしくみ

    (画像:TDKテクマグ コンデンサ・ワールド

    これは冬場にドアノブなどに触るとバチッと来るあの現象と同じ理屈ですが、ポイントは、外側と内側の錫箔がガラス瓶で絶縁されていることです。

    ロッドを通して瓶に入った摩擦の電子はプラスの磁性を帯びています。そのため、ガラスの外側の錫箔のマイナス電子を磁石のように引き寄せて瓶内に留まりますが、絶縁されているのでお互いに混ざり合いません。

    この状態で内側の箔に導体を接触させると、プラスの電子だけが勢いよく外に飛び出していくというわけです。プラスとマイナスの電子がくっ付いてしまうと、安定して動かなくなってしまいますから、電子をエネルギーとして取り出すためには、あえて分離させておく必要があったわけです。

     

    実用化のきっかけは無線技術の登場

    ウィムズハースト起電機(画像:Wikipedia)

    ライデン瓶はやがて、摩擦の静電気を増幅させるウィムズハースト起電機と組み合わせてつかうのが定番になりました。ですが実験装置や100人おどしなど人気の高い見世物に利用されるだけで、実用品としての出番はまだありませんでした。

     

    ライデン瓶をつかったバッテリー

    その状況を変えたのが、無線通信の出現です。

    ライデン瓶の発明から150年経つ間に、電池や電気の研究が進み、エジソンが世界初の発電所(直流)を1881年に稼働させ、テスラの三相交流発電所も1895年につくられていました。そこに最先端の新しい技術として登場したのが無線通信技術だったのです。

    (ミカドONLINE編集部)