【ヒストリー】27.電気アイロン①~歴史が後押しした電気アイロンの普及~

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    古代の高貴な家では衣服のしわを伸ばす習慣があり、中国では紀元前1世紀頃のアイロンの原型が出土しています。アイロンは洋の東西を問わず昔から使われてきた小道具であるため、人々はその進化を抵抗なく受け入れてきたようです。

    今のアイロンの原型となる、初めての電気アイロンを発明したのは米国のヘンリー・W・シーリーです。シーリーは熱源に初めて電気を使い、本体に組み込んだ凹の字型の炭素の芯棒に電気を通して鉄板を過熱させる設計で、1882年に特許を取り、デザインを改良して翌年に再度特許を取得しました。しかし当時はまだ電気が家庭に十分普及しておらず、プラグも電源コンセントもなかった時代です。そのためシーリーのアイロンは分岐したコードの線を留め具に直接差し込み、ネジで固定しています。これだとちょっと不安な感じもしますよね。

    シーリーのアイロンは温度調節ができないなど、今と比べて不便な点もたくさんありましたが、火を使わないという点が受けて評判になったとのこと。私達の感覚からするとシーリーのアイロンでも少々危険な気がしますが、熱と言えば炭やガスを使うしかなかった当時の人達にとって、このアイロンは取扱いが簡単で安全な装置という印象だったのではないでしょうか。

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    電気アイロンはその後改良が加えられて米国で普及し、日本では1914(大正3)年に初めて輸入され、すぐその翌年に、東芝から国産初の電気アイロンが発売されました。東芝の国産アイロンは今の価格で4~5万する商品でしたが、火鉢を使う日本では、すでに炭火式のアイロンを使っていた人も多く、価格の低下と共に販売数が増え、戦前の家電製品の中では普及率トップの商品となりました。