【ヒストリー】13.遮断器~湿気が最大の敵でした~

    通常の何十倍にも達する故障電流を遮断することができる機器を
    開閉器と区別して遮断器と呼んでいます。

    初期の送電システムは仕組みが単純で発電量も少なかったので、
    遮断器という概念はありませんでした。

    けれど系統の拡大で短絡時に爆発事故が起こるようになったため、
    短絡電流を安全に遮断できる高度な開閉器の必要性が出てきました。

    流れている電流を急に遮断しようとすると
    内部の接触部分でアークが発生し、すぐに電流を遮断することができません。
    このアークをどのような媒体の中で消すのか、
    その種類によりいろいろな開閉器(遮断器)が開発されました。

    最初に登場したのが絶縁油の中で電流を開閉する油入開閉器(遮断器)です。
    https://homepage-town.jp/mikado-d/reference/201503.html#history

    これは木や鉄でつくったタンク内に絶縁油を満たし、
    その中で刃型のスイッチを入切するだけの簡単なもので、
    1893年頃にアメリカでつくられ、
    日本でも1900年頃に木製の装置が製造されました。

    しかし明治40年、東京電灯で建設した駒場発電所では[a][b] 絶縁油の含浸が不十分だったのか、
    電圧を上げると木が燻ってきたそうです。

    木材を使用したことから日本特有の湿気に苦労したようで、
    当時の設計書には「遮断部タンクにはアメリカ松を用い、
    材料は充分乾燥させた上、リンシード油で48時間煮て
    70℃くらいで乾燥すること」という記述を見ることができます。