【今月の言葉】第18回「よろしかったでしょうか」_19号

    【よろしかったでしょうか】
    コンビニエンスストアやファミリーレストランなどで若い世代のスタッフが使う独特の敬語は俗にアルバイト敬語と呼ばれます。

    その中でも違和感を覚える言い回しとしてよく取りあげられるのが「よろしかったでしょうか」です。
    同じくアルバイト敬語のひとつと言われる「ほう」と組合せて「ご注文のほう、よろしかったでしょうか?」という表現などでよく使われます。
    すでに承っている事柄を再確認するためでなく、初めてオーダーを尋ねる時でも定型文のように過去形が使われるため、2000年ぐらいからおかしい言葉遣いとして世間の拒否反応が大きくなり、仕事の現場ではNGワードとして指導が強化されました。

    けれど今では「よろしかったでしょうか」は業種や世代を問わず広く浸透して次第に市民権を得つつあります。
    敬語はより遠まわしでよりへりくだる方向に変化していく特性を持っており、過去形をとることで断定的になるのを避けてぼかす表現がごく普通の『丁寧な言い方』としてオフィスでも使われるようになってきました。

    多くの人が使う言葉遣いは耳を通じて伝搬し次第に定着していきます。
    現在では若い世代にとどまらず指導する側も疑いを持たずに使っているケースも増えてきました。

     「よろしかったでしょうか」と過去形で尋ねる言い方は北日本には元々ある表現で、北海道の居酒屋「つぼ八」の接客用語がチェーン展開により全国に広まったという説があります。また、リクルート社が作った接客用の教育ビデオに端を発しているという説もあります。

    いずれにしても従来はあまり使われていなかった間違いともいえる限定的な言葉遣いが標準語として広まってしまう一つの例かもしれません。