GSユアサから放電頻度が高くても長寿命化を実現した制御弁式据置鉛蓄電池の新シリーズ「SNS-TN」が発売されました。制御弁式据置鉛蓄電池というのは、電解液の状態を工夫して補水を不要にした密閉式の鉛蓄電池です。今回はそちらをご紹介します。
当社(ミカド電装商事㈱)が代理店を務める株式会社GSユアサから、放電回数の多い用途でも長期間にわたる運用が可能な制御弁式据置鉛蓄電池「SNS-TNシリーズ」の販売が開始されました。
この商品シリーズのニュースリリースは2020年2月20日です。以下に、内容を転載いたします。
このたび発売した「SNS-TNシリーズ」は、従来の長寿命型MSE※1(当社製品シリーズ名:SNSシリーズ)のフロート充電用途※2に加えて、放電頻度が比較的高い用途において耐久性をもたせた電池です。
「SNS-TNシリーズ」は、MSE/SNSシリーズと形状互換品であるため、既に従来品をご使用いただいている場合でも置き換えが可能です。また、従来品と同様に、定格容量50Ah~500Ah (10HR)までの単電池を幅広くラインアップしているため、組み合わせることによって多様なニーズにお応えすることができます。
性能面では、当社が培ってきた蓄電池の長寿命化技術に併せて、活物質の高密度化技術などを適用することで、放電頻度が比較的高い用途における耐久性の向上に成功しました。これにより、年間50回放電で12年の長寿命化を実現したため、計画停電などの頻繁な放電を必要とする用途にも柔軟に対応します。特に、放電回数の多い鉄道地上用設備分野においては、列車運行の安全性と正確性を支えるための信号通信設備や、適切で迅速な情報伝達のためのデジタル列車無線のバックアップ用途などに最適です。※1 長寿命型MSEとは、補水・比重測定や均等充電が不要のため、保守作業の工数を削減できる制御弁式据置鉛蓄電池の一つで、フロート充電用途においてMSEより長寿命化を実現したもの。
※2 フロート充電用途とは、常時は蓄電池の満充電状態を維持する充電を行い、非常時には設備や機器をバックアップするために放電を行うという運用方法のこと。(出典:「制御弁式据置鉛蓄電池「SNS-TNシリーズ」を販売開始」GSユアサ社)
フロート充電とは?
電源のバックアップを目的にした蓄電池の充電方式には、トリクル充電とフロート充電という二つの方式があります。
トリクル充電は、トリクルという言葉が滴(しずく)を意味することでもわかるように、蓄電池の自己放電を補うため、継続的に微小な電流を充電しながら常時満充電を保つ充電方式です。普段は機器につながっていませんが、緊急時には常に満充電の状態で接続されるため、わかりやすい具体例としては、火災報知器など主に警報装置や防災設備のバックアップに採用されています。
一方、フロート充電は、蓄電池が常に機器と接続されていて機器の状態に応じて電源を供給する方式です。蓄電池は容量が減るとトリクル充電よりも高速で充電されますが、満充電になると過充電による劣化を防ぐために電流をバイパス回路に流し、蓄電池への負荷を軽減して長寿命になるように設計されています。感覚としてはノートパソコンを想像していただくと理解しやすく、フロート充電では停電時も瞬断なく一定時間機器を動かすことができます。そのためUPSや通信分野や都市インフラなど、停止してはならないデジタル制御のシステムに多く採用されています。
鉄道分野はなぜ蓄電池の充放電が多い?
さて、私たちの一般的な感覚では電源のバックアップというと、雷や自然災害など意図しない停電に備える非常用電源だけをイメージしてしまいますが、実はそれだけではありません。交通や通信など公共のインフラでは、保守・メンテナンスのための停電も存在します。
たとえば鉄道会社の設備において、電鉄変電所付帯の高低圧配電線路は、電鉄線路保守作
業のため月間最大10日程の計画停電が実施されるそうです。もちろん事故やトラブルでも電気を停めて点検や調査が行われますが、いずれにしても蓄電池の充放電が他の分野よりも頻繁に発生します。
前述の引用文で「年間50回放電で12年の長寿命化を実現した」「放電回数の多い鉄道地上用設備分野」という部分が強調されているのもそういった事情を背景としていることがわかれば、新シリーズの優れた特長とニーズがより明確に伝わるのではないかと思います。
GSユアサ社の新しい制御弁式据置鉛蓄電池「SNS-TNシリーズ」について、詳しくは以下をご覧ください。
➡ 「制御弁式据置鉛蓄電池「SNS-TNシリーズ」を販売開始」(GSユアサ社)
参考:鉄道施設の非常用電源 など