ノーベル賞日本人受賞者(29)日本被団協はどんな団体?~2024年(令和6年)に平和賞を設立68年目で受賞~

    みかドン ミカどん

    日本人ノーベル賞シリーズは前回で終わりのはずでしたが、朗報が入りました。2024年のノーベル平和賞に長年兵器の廃絶を訴えてきた日本被団協が選ばれたのです。そこで今回は本当の最終回として、日本被団協について解説いたします。

    核廃絶への長年の努力が結実

    2024年10月11日、ノルウェーのノーベル委員会は、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)にノーベル平和賞を授与すると発表しました。

    授賞理由は「広島と長崎の被爆者による草の根運動である日本被団協は、核兵器のない世界を実現するための努力と、核兵器が二度と使用されてはならないことを証言によって示してきた」というものです。

    日本被団協は広島と長崎の原爆で被害を受けた人々(被爆者)が中心となり1956年に設立されました。

    その2年前、米国がマーシャル諸島のビキニ環礁で実施した水爆実験が多くの放射線被害者を出すという重大な事件があり、160km離れた海域で操業していた日本のマグロ漁船の乗組員も23人全員が被爆しました(第五福竜丸事件)。

    乗組員たちは被爆によって火傷、水疱、出血などの急性放射線症になり、一人が半年後に亡くなりました。これを機に日本国内で原水爆禁止運動が起こり、運動はやがて原水爆禁止世界大会の開催につながりました。

    そして広島・長崎の被爆者と第五福竜丸事件の被害者が連携する形で設立されたのが日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)です。

    今のように情報が発達していなかった1950年代は、核の恐ろしさがまだ知れ渡っておらず、被爆者は重い健康被害だけでなく、差別や偏見、生活苦などにも直面していました。

    そこで日本被団協は「被爆者の医療・生活支援を国に求める」「核兵器廃絶を訴える」「被爆体験を記録し、後世に伝える」という3つの目標を掲げて活動を開始しました。

    やがて被団協の証言活動は、核兵器の恐ろしさを伝える貴重な「生きた教科書」として国際的に高く評価されるようになり、「ヒバクシャ」という言葉が世界中で使われるようになりました。

    2015年にノーベル賞に推薦されていました

    日本被団協は47都道府県それぞれにある被爆者団体の協議会です。(宮城県にもあります)

    代表理事会には3名の代表委員を筆頭に20余名の役職者がいますが、代表委員の一人である箕牧智之(みまきとしゆき)さん(82)は受賞の知らせに対して「夢の夢、本当にうそみたい」と語り、のちに訪れた韓国メディアにも「若い人の言葉をまねして『マジ?』と思った」と話しています。

    とはいえ、箕牧さんが発表の日時に広島市役所で、メディアに囲まれながら受賞の知らせを待っていたことから、まったくの寝耳に水というわけではなく、候補者と目されていることはご存じだったと思います。

    実は日本被団協は2015年に国際平和ビューロー(ベルリンに本部を置く平和団体)からノーベル平和賞候補に推薦をされていました。

    日本被団協などノーベル平和賞候補に推薦/国際平和団体 「核兵器廃絶の先頭に」

    もしかしたらそのときから、この日が来ることを待ち望んでいたのかもしれませんね。

    「ノーモア・ヒバクシャ」代表団31名がクラファンでオスロに渡航予定

    被爆者の平均年齢は2024年時点で85歳を超えており、高齢化が進んでいます。このため、被団協の活動には被爆二世や三世、非被爆者のメンバーが積極的に参加し、被爆体験や平和活動を継承する動きが強まっています。

    ノーベル賞授賞式は、ノーベルの命日である12月10日に開催されますが、日本被団協は31名で参加する意向を示しています。

    これは国内外の被爆者や被爆者二世、三世、さらには国際平和団体の代表者を含む広範な代表団を組織することにより、核兵器廃絶のメッセージをより力強く国際社会に伝えるためです。

    しかしノーベル財団が負担してくれる渡航費用は3人分まで。そこで被団協は11月15日午前零時から1000万円を目標にクラウドファンディングをスタートさせましたが、わずか1日で目標を達成してしまいました。

    Syncable :ノーベル平和賞授賞!! オスロへ日本被団協代表団を送ろう!

    そしてこの原稿を書いている11月20日午前1時の時点で支援総額はさらに増えて、28,274,663円に達しています。

    式に登壇するのは代表委員の3人ですが、この代表団には17名の被爆者が含まれており、式の翌日には現地の高校や大学で証言する予定です。

    その中には韓国原爆被害者協会の鄭源述(チョン・ウォンスル)会長(81)や在ブラジル原爆被爆者の会の渡辺淳子理事(81)などの被爆者も含まれており、多様な被爆者の声を届けることで、核兵器のない世界をより強くアピールしていく狙いです。

    ノルウェーのオスロで開催されるノーベル平和賞受賞式は日本時間の12月10日午前1時に始まる予定です。あまり夜更かしはできないので、次の日のニュースでぜひ確認したいと思います。

    (ミカドONLINE 編集部)


    参考/引用:日本被団協公式ホームページ [被団協ノーベル平和賞] 授賞式に31人派遣 被爆者17人 韓国からも(中國新聞) 「西から太陽が昇った」太平洋に降った死の灰 歯ぐきの出血に脱毛…日本人が核の恐怖を最も感じた日 | 文春オンライン  など