現在、日本人ノーベル賞受賞者は28人です。ですがいったい何をした人なのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか?今回は2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授です。
iPS細胞はどんな臓器でも再生できる未来の夢の細胞
2012年(平成24年)に日本で19番目にノーベル賞を受賞したのは山中伸弥教授です。この年、山中教授はイギリスのジョン・ガードン博士と共にノーベル賞の生理学・医学賞を受賞しました。
ガードン博士は1962年にオタマジャクシの小腸の細胞からカエルを複製させることに成功し、これがのちに「羊のドリー」などで知られるクローン技術に発展しました。そしてその研究を基に2000年代、山中教授がiPS細胞をつくり出すことに成功しました。
iPS細胞というのはさまざまな組織や臓器に変化させることができる細胞のことで人工多能性幹細胞(iPS細胞:induced pluripotent stem cell)と呼ばれています。
骨・皮膚・血液などに代表される体の各組織や様々な臓器はすべてひとつの受精卵から分化してつくられていきますが、山中教授がiPS細胞の作製に成功するまでは、一度出来上がった組織や臓器の細胞はもうそれ以上変化しないと思われていました。
この考え方では、病気やけがで失った体の組織や臓器を再生するには受精卵が必須ということになります。
けれど山中教授はすでに分化を終えた皮膚などの細胞にある遺伝子を組み込むことで、あらゆる生体組織に成長できる万能な細胞を作ることに成功したのです。
受精卵がなくても体の一部や臓器をつくることができる技術の開発は再生医療が今後前進していく大変大きな発見となりました。
iPS細胞の「i」はiPODの「i」なんだって!
山中教授は元々整形外科医を目指して医師になりましたが、手術に必要以上に時間がかかったり点滴を失敗してしまうなど、外科医としては不器用な面があったようです。
そのため研修医時代に指導医から「ジャマナカ」と呼ばれており、自分でも不向きを自覚して研究者に転身をしました。
そこで仮説通りにはいかず逆の結果が出たり、むしろ動物の状態を極端に悪化させてしまうような実験を経験したことで、そういった予想外の未知の現象を解明することに興味を持ちました。
普通なら落胆してしまう現実ですが、そこにワクワクした関心を持って没頭してしまうところが山中教授らしいですね。
iPS細胞の名付け親は山中教授自身ですが、iPSの「i」が小文字なのは、当時流行していた音楽プレーヤーのiPodにあやかり、広く普及してほしいという願いを込めて命名したそうです。
誰にでも好かれる気さくな人柄のため今でもテレビ出演などが多い同教授ですが、歴代のノーベル賞受賞者が〇〇博士と呼ばれているのに、なぜ山中氏だけが「教授」という肩書で呼ばれるのか不思議です。
ちなみに山中教授は1993年に大阪市立大学大学院で医学博士号を取得していますが、そのときの論文もうまくいかなかった実験を追求したものだったようです。
二段の腕前を持つ柔道は学生時代に10回以上骨折、形成外科医は挫折、実験はなぜか失敗するなど、「うまくいかない」ことが山中教授が結果を出すためのキーワードなのかもしれません。
iPS細胞が医療の手法として実用化するのはまだ先ですが、新薬の開発など様々な分野での成果が期待できるため、iPS細胞は現在、世界中で研究が進められています。
(ミカドONLINE 編集部)
参考/引用:山中教授の「iPS細胞」ってiPod のパクリ!?流行らせたいと頭小文字: J-CAST テレビウォッチ【全文表示】 iPS細胞の発見をもたらした「必要」と「偶然」 —ノーベル生理学・医学賞を授賞した研究の背景(山中伸弥 氏 / 京都大学iPS細胞研究所所長・教授) | Science Portal – 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」 山中研究とガードン研究:分化と未分化、カエルとヒトをつなぐ「初期化」 – 教養学部報 – 教養学部報 山中伸弥さんって どんな人? 医学・生理学賞|ノーベル賞2020 NHK特設サイト など