雑草というよりは山野草に属するツワブキですが、当社の会長が以前より何度も熱く語るので、今回は取り上げてみましたよ!
観賞用でも栽培されるフキに似た葉の山野草
ツワブキは海沿いの草原や崖、林の縁に見られる常緑の多年草です。日本では太平洋側で福島県以南、日本海側で石川県から西の地域に自生し、朝鮮半島や中国、台湾でも見ることができます。
花の少ない晩秋から初冬に開花するので観賞用としても人気があり、日本庭園などでも石組みや木の根元などによく植えられる植物です。
ツワブキは漢字で「石蕗」と書きます。ツヤのある濃緑色の葉がフキ(蕗)の形に似ていて、それが岩場や石の多い場所に生えることからそう呼ばれているようです。
一方、ツワブキの「ツワ」には諸説があり、平安時代や室町時代の和歌や随筆にも名前が登場していることから、「つわもの(兵)」と同じく古語で「強い」「丈夫」という意味を持つ「ツワ」が厳しい環境でも育つことをあらわしているというのがそのひとつ。
そのほかには、津辺(=海辺)に生える葉を意味する「津葉」が転じてツワブキと呼ばれるようになったという説もあります。
「石蕗」をなぜ「ツワブキ」と読むようになったのかは定かではありませんが、いくつかの地域の違った呼び名が長い歴史の中でひとつになっていったのかもしれません。
庭でも山野でも時期的に目立つ存在
ツワブキ(石蕗)の開花時期は、10月から12月頃です。秋が深まり、他の植物が色を落とし始める時期に、ツワブキは明るい黄色の花を一斉に咲かせるため、庭や自然の中でひときわ目を引きます。
当社の沢田元一郎会長はその様子が子供のころから印象的だったようで、このシリーズのテーマを決める編集会議では「普段は本当に地味で目立たないのに、冬が近づくと突然鮮やかな花がパーッ!と咲くの」と、両手を天井に高く広げて、何度も熱く(?)説明をしてくれました。
そこで今回はツワブキを取り上げてみた次第です。
自然の中でも晩秋の山道に咲くツワブキは古来から目立つ存在だったらしく、著名な歌人も俳句を残しています。
松尾芭蕉:「いざさらば 霜も朧(おぼろ)に 菊(つわ)咲く野」
与謝蕪村:「しぐるるや 石の蕗咲く 谷の道」
高浜虚子:「石蕗咲くやこの山道を我が歩む」
芭蕉も蕪村も当社の会長と同じく、霜や冬の冷たい雨などすぐれない気候の中で目に入った黄色い花が印象的だったのだと思われます。
食用としてもファンがいます
ツワブキはフキと同様に地下茎から伸びる若い葉柄(軸)が食べられます。野菜としては山菜に分類されており、早春の味覚として楽しまれていますが、根の部分に「ピロリジジンアルカロイド」という天然の毒素が含まれているため、アク抜きなどの下処理が必要とのことです。
私はツワブキを食べたことがありませんが、ネットで検索するとフキの煮物にそっくりの写真が多数アップされており、食用としても一定のファンがいるようです。
ツワブキはフキと違って茎の中に空洞がないため、食べてみると身の詰まった感じがするそうですが、ほろ苦さとえぐみ、そして何よりシャキシャキの食感が魅力で「一度食べると病みつきになる」とブログで語っている方もいらっしゃいます。
だとすると、春先には山間の旅館などでも出してくれそうですね。一度どこかで食べてみたいと思いました。
(ミカドONLINE編集部)
出典/参考記事:ツワブキ(岩蕗) – 庭木図鑑 植木ペディア ツワブキとは?フキとの違いや食べ方について解説! | クラシル ツワブキとは|育て方がわかる植物図鑑|みんなの趣味の園芸(NHK出版) など