①空中浮遊型風力発電

    今回からは未来に向かう新しい発電技術を
    3回シリーズでお届けします。
    第1回目の今回は「空中浮遊型風力発電」です。

    アルタエロス社の空中浮揚型風力発電機

    再生可能エネルギーという言葉が
    最近では随分浸透してきたと感じますが、
    昨年の12月にソフトバンクが
    アルタエロス・エナジーズ社
    (マサチューセッツ州。以下、アルタエロス社)に
    700万ドルの出資を行うというニュースが発表されました。

    アルタエロス社はマサチューセッツ工科大学出身者が
    2010年に設立したベンチャー企業で、
    空中浮遊型の風力発電を開発している会社です。

    風力発電と言えば大きなプロペラの付いた
    発電機を思い浮かべますが、
    アルタエロス社の空中浮揚型風力発電機は
    従来のものとは違い、冒頭に掲げた動画のように、
    飛行船のような形状をしています。

     

     

    Buoyant Airborne Turbine(BAT, 浮揚型空送タービン)
    と名付けられた風力発電機は、
    直径約20メートルのドーナツ型。

    タワー型風力発電機よりも高い、
    最大高度2000メートルの空中にヘリウムを使って浮かべ
    中央空洞部の3枚の羽で発電します。

    強い風が吹く上空に気球を浮かべれば、
    地上よりも安定した発電量が見込め、
    600メートル上空での発電量は、
    地上の2倍にもなるそうです。

    商用化を探る最新型は発電能力最大200キロワット。
    150世帯分の年間消費電力をまかなえ、
    発電コストは1キロワット時15~18円と、
    日本の太陽光発電の半分以下とのことです。

    地上工事が必要ないBATは、
    タワーを建設できないところでも利用できるため、
    僻地等の電力コストを大幅に下げ、
    代替アンテナとして
    通信サービスを提供することもできます。

    遠隔地への機器装置の搬入も容易であることから、
    アルタエロス社では送電網のない地域や
    大規模農園、採掘場、難民キャンプなどでの
    利用を見込んでいます。

    ソフトバンクが700万ドルを投資

    ソフトバンクは、東日本大震災の教訓を生かそうと、
    係留気球を用いた携帯電話中継システムの
    開発を進めていましたが、
    新事業として空中で発電するとともに
    携帯電話の通信基地局として運用する
    実用化の可能性を踏まえて、
    同社の事業を支援することにしたようです。

    空中の風力を利用した発電装置は、
    ほかにも飛行船型のものや、凧型、気球型など、
    過去にも色々考え出されていますが、
    まだ実用化には至っていません。(2015.01現在)

    雷や台風・竜巻などの対策、
    高さによって長い電源ケーブルが必要になることなど、
    まだ課題はありますが、
    ソフトバンクでは2015年に
    技術を実用化したいと考えており、
    年内には「世界初」のニュースを
    聞くことができるかもしれませんね。