世界で最初の市販型GPSカーナビは日本のパイオニアから1990年に発売され「AVIC-1(カロッツェリア)」という製品です。パイオニアは著名な音響メーカーですが会社の規模としては大手電機メーカーに及ばず、その当時は様々な開発競争で先を越され何度も苦杯をなめていた時期でした。そんな中で、カーステレオの最大の得意先である自動車メーカー各社がカーステレオの製造に自ら乗り出すことが発表されました。「カーオーディオに変わって屋台骨を支えられるような新しい企画を」そんな大きな危機感から、パイオニアは音響メーカーでありながらカーナビ開発に着手することになりました。
最大のポイントは今自分がいる位置をどうやって知るかです。東西冷戦緩和によるアメリカの軍事技術の公開(GPS)に着目し、パイオニアはいち早く実験を成功させますが、その際の受信機がなんと200万円!!車より高くては話になりません。担当者はカーナビに採用したアメリカの受信機メーカーに値段交渉に行き、「この受信機のコストダウンに成功したら御社のGPS受信機を自由に使わせて欲しい」と賭けに出ました。その後、必死のコストダウンの結果、200万円の受信機が10万の価格で完成するまでになりました。パイオニアの世界初のGPSカーナビの販売価格はディスプレイ別で35万円。当時は衛星の数が少なく、12時間しか使えませんでしたが、それを「12時間は使える」という視点で発売に踏み切り、話題を集めました。走行中の自分の居場所が地図上でわかるというのは当時としては大変画期的な仕組みだったのです。
発売時のキャッチコピーは「道は星に聞く」。CMキャラクターにF1レーサーのジャン・アレジを起用し、人工衛星の電波で車を導くことからサテライト・クルージング・システムと名付けられたこの製品は成功を収め、日本のカーナビ王国への大きな一歩になりました。ちなみに彼らが実験に使った場所は東京の迷宮と呼ばれる世田谷。「ここが走れたらどこでも走れる」を合言葉に頑張って来たそうです。 (写真の出典:カーナビヒストリー)
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