【雑学】歴史を感じる香り『樟脳』




    藤澤樟脳_img49a6b3cbzikfzj.jpeg

    衣替えの最中、思い出の服に小さい穴を見つけるとがっかりしますよね。犯人はヒメマルカツオブシムシなどの幼虫ですが、その対策として昔から使われてきたのが樟脳です。「樟」は「クスノキ」。独特の香りを持つクスノキは虫害や腐敗に強く、古来、仏像や船の材料として重宝されていたそうです。その葉や枝などを水蒸気蒸留し結晶化させたのが樟脳で、血行促進や鎮痛などの作用もあり、かつては強心剤としても使われていました。「カンフル剤」の「カンフル」はオランダ語で樟脳を指します。

    樟脳は江戸時代には金・銀に次ぐ輸出品で国益に大きく貢献し、植民地だった台湾でのプランテーション経営により世界一の生産国となった時代もありました。その後化学の発達により合成樟脳が増え、また防虫剤もナフタレンやパラジクロロベンゼン製剤、それらよりも刺激臭のないピレスロイド系のものが多く売られるようになっていきます。国内の天然樟脳生産者は現在かなり少ないようですが、風に当てれば衣類に残ることもないという優しい香りは歴史や懐かしさを感じさせてくれるかも。最近はリフレッシュ効果のあるアロマオイルとしても注目されているそうです。ちなみに樟脳の伝統商品「藤澤樟脳」のイラストは邪気を払うといわれている鐘馗(しょうき)様。5月人形や武者絵でもお馴染みですがこちらも歴史を感じさせますね。

    —読者アンケート—

    バックナンバー(過去の記事)はこちらです。

    最近の5記事

    幸運だけじゃないシロツメクサのパワー 春には苦みを盛れ 『そば』に引っ越してきました 楽しいカーニバルの裏に藁人形 竈神様が怖くて普及しなかった「鍋料理」の歴史