単位の歴史(18)~オーム2:スピーカーのカタログでよく見るインピーダンスって何ですか?~

    みかドン ミカどん今回は単位の解説や歴史の紹介ではありませんが、似たような言葉がごちゃごちゃ出てきて何がなんだかさっぱりわからない交流電気の抵抗についてまとめてみました。

    インピーダンスは交流のときの抵抗です

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    回路が直流なら割とわかりやすい

    前回の記事でオーム(Ω)は電気抵抗の単位とお伝えしました。抵抗と言うのは電気の流れをせき止める働きをする作用のことで、オームは電気の流れにくさを表す単位ですが、交流回路における「抵抗」に対してもオーム(Ω)が使われます。

     

    電池につないだ豆電球のように、電圧が変化せずに一定の値で流れる直流回路の場合は、オームの法則「V=IR」により、抵抗が大きい豆電球には電気があまり流れないので、結果として暗くなる、というのは、なんとなくイメージできます。

    (前回の記事)単位の歴史(17)~オーム:国内では評価されなかったドイツの遅咲き物理学者~

    ところが家庭やオフィスのコンセントから取る交流電源の場合は、話がそれほどシンプルにはなりません。なぜなら交流電源は電圧のプラスとマイナスが目まぐるしく入れ替わる波状の電気だからです。なので、直流の時とは考え方も振る舞いも計算式も別物になります。

    そのため、直流の時の「抵抗」(R:レジスタンス)に相当する働きは、交流ではインピーダンスと呼ばれます。ちなみにインピード(impede)には邪魔する、妨げる、という意味があります。

    音を出す装置ではインピーダンスが重要です

     

    インピーダンスの単位はオーム(Ω)ですが、インピーダンスという言葉が使われている場合は電源が交流である時の電圧と電流の比の数値と捉えた方がわかりやすいかもしれません。オーディオの接続や電子楽器等でインピーダンスが重視されるのは、それが音質に影響して来るからです。

    音響装置のインピーダンスに関しては

    • 高いと:ノイズに弱い
    • 低いと:ノイズに強い

    という性質があります。

    これは

    インピーダンスが高い=水が流れにくく急流で川幅の狭い渓流
    インピーダンスが低い=水がとうとうとゆったり流れる川幅の広い大河

    のような感じに例えて、ノイズという外部からの影響の受けやすさを説明しているサイトもあります。

    (参考)インピーダンスとは

    また、複数の機器やケーブルを接続して音を出す(エレキギターなどの)電子的な楽器やオーディオなどは、接続し合う機器同士のインピーダンスが適正でないと、音声信号のやりとりに異常が出たり、思った通りの音量が出ないなどの障害が発生するケースもあるようです。

    ちなみにノイズというのは他の電子機器の影響を受けて、従来の音に異音や雑音が入る事です。一番わかりやすいのは照明などを点けた時にラジオからプチッと音がするケースですが、ノイズの説明をしている上の動画を見てみると、ヒーターやPC、そして待機電源からでもギターにノイズが入ることがわかります。

    インピーダンスは交流機器の総合的な入口・出口の値

    直流と異なり交流の場合のインピーダンスは「ここが抵抗!」と指差せるわけではなく、機器を接続するときの目安となる概念的な数字と言えるかもしれません。

    機器内の回路には様々な目的で様々な制御の部品が配置されていますが、直流と交流では振る舞いが大きく異なります。

    コイル(インダクタンス)・・・直流の回路にコイルをつなげても電流・電圧に変化は起こらずただの導線としての機能しかありません。ですが交流の場合はプラスマイナスで上下する電圧の波が磁界の変化を引き起こし、それが電流や電圧を妨げる方向に発生するため、結果的にコイルは抵抗となります。

    それは電磁誘導の原理をつかって説明されるため、このとき(直流の)抵抗に相当する「電流を妨げる力」を誘導性リアクタンスと言います。単位はオーム(Ω)です。

    交流回路におけるコイルは電流の急激な変化を打ち消す働きがあるため、電流の急激な変化を緩和します。そのときの変化を妨げようとする力インダクタンスと言い、電流そのものを妨げようとするリアクタンスとはそもそもの働きが異なります。

    コンデンサ(キャパシタンス)・・・乾燥した冬場にドアノブなどの金属に触ると、体に蓄積された静電気が一気に放電してバチッという音と共に指先に痛みが走ります。乱暴なたとえではありますが、コンデンサはそれと似た原理で電気を溜めたり放出したりして回路内の電気のオフ/オンを静電気の原理で細かく制御する部品です。こちらの単位もオーム(Ω)です。

    ところが交流の場合にはコンデンサーで電気が止まるということはありません。交流では電圧のプラスとマイナスが上下しているので、溜まった電荷のプラスとマイナスも激しく入れ替わり結果的に交流電流が流れているのと同じ状態になります。

    コンデンサも回路を安定させるための部品ですが、電気を溜める機能をつかって流れを制御するため、コンデンサの作用で発生する交流回路の電気の流れにくさは、容量性リアクタンスと呼ばれます。

    こういった様々な部品が配置された回路全体で決定される抵抗の値がインピーダンスになります(もちろん単位はオーム(Ω)です)。インピーダンスは交流電源や交流回路に関連してよく出てくる言葉ですが、私達一般人が楽器やスピーカーなどの音響機器の仕様で目にする場合は、あまり難しく考えず、詳しい人がベストな音を出すために接続の時に確認すべき数字、とあっさりとらえたほうがよいのかもしれませんね。


    参考/参照記事 インピーダンスとは 【電気】インダクタンスとインピーダンスの違いって? コンデンサとコイル-さまざまな役割を持つ電子回路の基本部品 【今さら聞けない】インダクタンスって何? など