ミカドサイエンス&テクノロジー講座(15)~一度食べたら好きになる!食用コオロギが身近な食材になる日も近い?~

    みかドン ミカどん

    8月30日の河北新報に山形県新庄市の会社が食用コオロギ養殖事業を始めた記事が掲載されました。”コオロギを食べる”と聞くとギョッとしますが、調べてみると美味しくてファンも増えているらしいんです。

    新庄のメッキ工場が将来の新事業としてコオロギ養殖を開始

    食用コオロギ養殖事業に乗り出したのは、金属材料のめっき加工を専門にする新庄市のハイジェントテクノロジー山形工場です。

    同社では食料危機の救済策としても注目されているコオロギを商品化し、ゆくゆくは地元新庄の特産品開発にもつなげたいそうです。

    この記事は山形新聞のサイトにも掲載されました。

    🌎 食用コオロギ養殖、来月にも商品化 ハイジェント山形工場(新庄)Internet Archive

    ここでなぜ今コオロギ?と思う方も多いかもしれませんが、2013年に国連食糧農業機構(FAO)が、温暖化や人口増で懸念される世界の食糧問題の解決策の一つとして昆虫食を推奨して以来、昆虫は将来有望なたんぱく源として注目されています。

    特にコオロギは以下のように優れた多くの特長があるため、日本でもすでにいくつかの会社が養殖事業を開始しています。

    食用コオロギの優れた特長
    ✅スポーツ用プロテインに匹敵する豊富なタンパク質
    ✅1年中飼育が可能で35~40日で成虫になる生育スピードと回転率の速さ
    ✅育てるのが簡単でしかも省スペース
    ✅雑食で何でも食べるのでフードロスの解消に役立つ
    ✅廃棄部位が少ない
    ✅同じ重量(食用部分)を得るための飼料が牛の10分の1以下
    ✅家畜のようにゲップを出さず温室効果ガス排出量が少ない

    しかしここで一番気になるのは、大きな心理的抵抗ですよね。ところが食べた人の食レポを拝見すると、当初の気持ち悪さが吹き飛ぶぐらい美味しいらしいのです!

    ブロガーがコオロギラーメンを絶賛、ほかにも続々商品化!

    まずは以下のブログをお読みください。

    🌎 【閲覧注意】コオロギラーメン実食レポ! 爽やか慶應ボーイは“昆虫食の伝道師”

    この記事は、昆虫クリエイターの学生(当時)と煮干しラーメンの名店「ラーメン凪」が1日限定でコラボしたコオロギラーメンの企画を、ライターさんがレポートしたものですが、見た目をしのぐ美味しさに「うまい、うまい」を連発していますよね。

    コオロギラーメンは通販でも購入できるそうですが、こちらのブログを読むと女優の長澤まさみさんも好物とのこと。

    ほかの記事を読んでみてもわかりますが、どうやらコオロギは小エビに似た味と食感でかなり美味しいらしいのです。そして一度美味しいとわかってしまうと、見た目のグロさは気にならなくなる人も多いようです。

    コオロギを使った様々な商品

    現在はいろいろなコオロギ食品が商品化されていますのでその一部をご紹介します。

    コオロギせんべい

    無印良品が昨年から発売を開始した商品で、このサイトでも「コオロギがビジネスになる?コオロギせんべい商品化」というタイトルで以前取り上げました。が、その頃は実食のレポートもなく、書き手としては少々半信半疑でした。でもついに商品化しましたね!しかも売り切れ続出。お味に関しては以下のブログをご覧ください。”おいしいとわかれば、もう食べる手は止まりません”とのこと。

    🌎 【無印良品】どんな味?SNSでも話題の「コオロギせんべい」を食べてみた!

    コオロギビール

    前述のコオロギラーメンを手掛けた昆虫クリエイター、地球少年 / 篠原祐太さんらのグループが立ち上げた昆虫レストランANTCICADA(アントシカダ:東京都)が岩手県の遠野醸造とコラボし、福島県二本松市のフタホシコオロギを使ってつくられた東北由来のビールです。食レポは以下をご覧ください。”コク深く繊細な味がたまらない!”そうです。

    🌎 原材料はコオロギ! 世界初の「コオロギビール」を飲んでみた

    二本松コオロギ

    昆虫食の専門企業TAKEO(代表取締役兼CEOの齋藤健生氏は気仙沼出身)が二本松で生産されたコオロギを使って開発したコオロギのスナックです。福島名物のソースカツ丼にちなみ、ソース味の昆虫煮干しに仕上げたそうです。お味は「意外にうまい」らしいのですが、少し粉っぽいという感想の方もいるようです。同社の製品では青りんごの香りがするタガメサイダーが大人気です。

    🌎 【閲覧注意】栄養価抜群の昆虫食を食べてみた結果…まずい?美味しい?

    二本松のコオロギ生産者は総合化学企業のグループ会社

    太陽グリーンエナジー株式会社のコオロギ養殖ハウス(画像:GetNavi web

    コオロギビールや二本松コオロギの原料となるフタホシコオロギは福島県の二本松市で生産されています。実はコオロギラーメンのコオロギにも二本松産が使われています。

    生産しているのは太陽光発電や植物工場を手掛ける太陽グリーンエナジーという会社ですが、親会社の太陽ホールディングスは、ソルダーレジスト(プリント配線板の回路を絶縁する緑のインク)の世界シェアトップを誇る総合化学メーカーです。

    同社は2017年にエレクトロニクス事業だけでなく、世界的な課題である3つの分野「医療・医薬品、エネルギー、食糧」を新たに事業領域に加え、総合化学企業を目指すことを決めました。

    そして徳島大発のベンチャー「グリラス」と「人の食べ物としてのコオロギ」を共同研究開発して今に至っています。コオロギは埼玉県嵐山町と福島県二本松の二つの生産拠点で年間1トンを生産していますが、それでも現在は生産が受注に追いつかない状況だそうです。

    この記事の最初にご紹介した新庄市のハイジェントテクノロジー山形工場はその太陽グリーンエナジーから技術提供を受けています。こうやってみると、世界の”持続可能”と自社の”持続可能”を目指し、新しいビジネスの模索と連携が広がっている気がします。

    私は若い頃にアルバイトした地場産品店で、試食用の佃煮を食べてイナゴが好きになりました。一度食べて「美味しい!」と思うと、確かに姿カタチはあまり気にならなくなります。

    果たしてコオロギはイナゴのような存在になるのでしょうか?あるいは日常的な食材として普通にスーパーの棚に並ぶ日が来るのでしょうか?

    多くの人が「うまい!」と感じたらそれも夢ではないかもしれません。ここまで書いてきた私も考えが変わり、少しずつ「食べてもいい」気がしてきました^^・・・そのためにも各ベンチャーさんにはたくさんの美味しい商品を開発してほしいと思います。

    (ミカドONLINE編集部)


    出典/参考記事:無印良品の「コオロギせんべい」誕生秘話 日本で本格化する昆虫食(1) ”食べるコオロギ”育ててます 日本の昆虫食ビジネスに挑む国内企業の奮闘 昆虫食の「ANTCICADA」が「おうちでコオロギラーメン」を販売開始!2種のコオロギで出汁をとった話題のコオロギラーメンを自宅で楽しめます。 虫たちの魅力を世界に届けたい!地球を味わうレストラン「ANTCICADA」開業。 昆虫という食の選択肢。ネガティブな印象を変えようと活動を続ける若者がいる。[ANTCICADA/福島県二本松市] 世界で注目を集める「昆虫食」は、日本の食シーンに革新をもたらすか いま「昆虫食」が熱い!「食」の専門家がその現状と可能性を探る。  「エコなタンパク源」昆虫食のいま 食用コオロギ生産工場も取材 総合化学メーカーがなぜ昆虫の養殖に参入? ビールやラーメンに使われるコオロギの魅力 食用コオロギのEC販売開始、新型コロナでペットフードの需要増 太陽グリーンエナジーが東北サファリパークと飼料用昆虫の共同研究契約を締結、販売を開始

     など