捨てずに発電!!なんでも発電!!(3)中小企業でもバイオガス発電が可能!うどん県のうどん発電で廃棄食品をリサイクル

     

    みかドン ミカどん

    従来は捨てられていた廃棄物等を活かし、新たなエネルギー資源として活用している企業や自治体をご紹介しています!第3回は「うどん県」の呼び名で有名な香川県のうどん発電です。今回は他の食品を扱う中小企業でも取り組める事例であることが特長です。

    国内で群を抜く廃棄うどんの多さを活かしてうどん発電

    (画像:BSテレ東バックナンバー

    うどん県で有名な香川県では、廃棄されるうどんをリサイクルする「うどん発電」の取り組みが行われています。

    これはうどんメーカーの工場から廃棄されるうどんの切れ端、うどん店から出る時間切れのうどんなどを回収して、メタン発酵によるバイオガス発電で売電するものです。

    うどんの生産量・消費量が共に多い香川県ですが、その分だけ廃棄されるうどんの量も国内で群を抜いて多く、その処分が事業者や自治体の大きな悩みでした。

    讃岐うどんは「早い・うまい・安い」が特長なので、県内のうどん店ではうどんを先に茹でておき、注文が入ったらさっとお湯で温めて提供します。ところが、うどんは茹でてから20分以上経つとコシがなくなり廃棄せざるを得ません。

    そういった”うどん県”ならではの事情もあり、廃棄うどんは業態や規模の大小を問わず、コストやSDGsの面で関係者の喫緊の課題だったのです。

    例えば、大きな製麺所では1日4トンの廃棄処分が出るそうです。1日で4トントラックの最大積載量になるぐらいの廃棄うどんは通常、焼却処理されます。

    そのため県内外に6店舗と工場を持つある飲食事業者は年間150トンの廃棄うどんを350万円かけて産廃事業者に引き取ってもらい、6工場を持つある冷凍うどん事業者は年間1500トンの廃棄うどん約2000万円かけて廃棄処分していました。

    しかし、うどんのほとんどは水分です。化石燃料で水を燃やすというのも確かに無駄な話ですしコストも馬鹿になりません。そして何より食品事業者ならば廃棄物の山を見て「もったいない、せめて何かに使えれば」と思うのは当然の感覚かもしれません。

    バイオエタノールよりもバイオガス発電!

    この課題解決に取り組んだのが地元高松のちよだ製作所です。ちよだ製作所では飲食事業者からの相談を受けて廃棄うどんによるバイオガス発電を提案しました。

    ちよだ製作所では2000年代前半から、当時流行していたバイオエタノールの研究に着手していましたが、その過程で製品の1割しか使われず保守管理にも常時プロの人手を要するバイオエタノール燃料の製造よりも、素材を発酵槽に入れてメタンガスを生成させるバイオガス発電の有効性に気づきました。

    そしてちょうどその頃に香川県から廃棄うどんの相談があり、実証を兼ねて自社製のバイオガスプラントの1号機を製造して敷地内に設置したのです。

    その1号機にうどん事業者からの廃棄うどんや県内の食品加工工場などから回収したあらゆる食品廃棄物や野菜くずなどを投入して発電を行い、2014年から四国電力への売電を開始しました。

    当時はFITの固定価格買取価格が高かったこともあり、それによる収入は1kw/39円で年間約650万円になります。

    ちなみに発酵に必要なメタン菌は人間と同様にバランスのいい食生活を好むようで、うどんだけよりもほかの食品を混ぜたほうが発酵が進むそうです。

    つまり便宜上「うどん発電」と呼ばれていますが、このプラントでは人間が消化できる食べ物なら何でも活用できるので、香川県以外でも導入が少しずつ増えてきています。

    「うどん発電」のプラントが他県の他事業にも

    「うどん発電」のプラントを導入した和歌山の食品会社(画像:ちよだ製作所)

    1号機を開発して以降、ちよだ製作所には全国各地からの視察や問い合わせが続き、同社では岡山、奈良、大阪、愛媛、和歌山の食品メーカーを中心に毎年1基のペースで設置を続けてきました。現在は関西圏のスーパーなどにも導入されているそうです。

    ちよだ製作所のバイオガスプラントの特長は、食品リサイクルが求められる食品メーカーや飲食店を潜在顧客として想定されていることです。

    そのため1日の処理量として他社がほとんど参入しない3トンや5トン、10トンの小規模プラントを提案しています。

    同社のバイオガスプラントはコストを抑えるために発酵槽などの設備も自製し、国内で広く売られる汎用的な部材を使用して設備導入費や保守費の価格抑制を行っているため、「食品廃棄物の問題を自分の代で何とかしたい」という経営者からの相談が多いそうです。

    ですが残念ながら、私たちが住む東日本にはまだありません。理由は同社の人材に限りがあり、アフターフォローに手が回らないからです。

    現在はそのための人材を育成中(2022年時点)でいつか首都圏にも進取したいとのことですが、確かにその日を待ち望む事業者は多いかもしれませんね。

    地産地消のエネルギー循環リサイクル

    さて、以前ご紹介した霧島酒造の「サツマイモ発電」 と同様に「うどん発電」でも発電に使った後の残りカスは固形肥料や液体肥料として再利用されています。

    この肥料で小麦を育てれば、まさに地産地消のエネルギーが循環していくことになります。

    廃棄うどんの活用は高松市でも昨年から、下水処理施設のバイオガスプラントで実証実験を始めるなど、年々取り組みが増えているようです。

    今回はプラントに焦点を当てた内容でしたので、「うどん発電」の基本を知りたい方は以下の動画も見てみてくださいね。

    (ミカドONLINE編集部)