
鈴木俊貴著 小学館
今回は 僕には鳥の声がわかる 鈴木俊貴 です
鳥の声が分かるって 超能力者?
って普通思いますよね。
でも著者の鈴木さんはれっきとした鳥類学者です。
現在は東京大学の准教授を勤められていて、みずからを「動物言語学者」と名乗っています。
動物言語学? 聞いたことないです!
またまた疑問形の嵐が吹き荒れますね。
私も「動物言語学」というのは初めて聞きました。
しかし鈴木さんはただ自称しているのではなく、東京大学に「動物言語学分野・鈴木研究室」という組織を正式に立ち上げた、世界初の「動物言語学者」なんです。
言語を使うのは人間だけ?
いや、普通そう思いますよね。
中には「ウチのワンちゃんは、私の言葉が分かる」というかたもいらっしゃるかも知れませんが、鈴木さんが主張しているのはそういうことではなく、動物はその種に応じた個別の言語を持っているんじゃないか、それを使ってさまざまコミュニケーションを行っているんじゃないか? ということなんです。
シジュウカラは20以上の単語を組み合わせて会話している?
もう、またまた疑問形になってしまいました。
鈴木さんの研究、フィールドワークによると、シジュウカラは20以上の単語を組み合わせて会話をしているそうです。
例えば「ヒヒヒ」は「タカだ」という意味で、この声をタカを見つけた一羽が発すると、みんなが空を見上げて警戒し、すぐに木陰に隠れます。
また「ピーツピ」は「警戒しろ」「ヂヂヂヂ」は「集まれ」、「ピーツピ ヂヂヂヂ」と組み合わせれば「警戒して集まれ」、となりモズなどの小型の天敵を集団で追い払うことができます。
さらにコガラの「集まれ」は「ディーディー」だそうですが、これをシジュウカラは聞き分けることができるという、バイリンガルなんだそう。
ただの自説ではなく 学会で発表するレベル というか発表しています
これは、たまにある「評論家」や街の変わり者が唱えてる説とは全く違い、科学的な実証実験を行った上に、国際的な学会で発表され、大きな話題になったものなんです。
鈴木さんの論文は米国科学アカデミー紀要(PNAS)という世界一流の学術誌にも掲載され、三人の審査員からも「エレガント」と絶賛されたそうです。
科学には必須である「思考節約の原理(オッカムの剃刀)」にのっとった、鈴木さんの実験の様子は、この本に詳しく書かれています。
ジェスチャーも使っている?
さらに、つがいのシジュウカラはヒナのいる巣箱に入る順番を、羽を小刻みにふるわせる「お先にどうぞ」のジェスチャーで決めていることも分かってきたそうです。
シジュウカラってジェントルマン、いやジェントルバードなんですね。
とても楽しく読みやすい物語調
そんな最先端の科学の話なんですが、鈴木さんの飾らない人柄が浮かび上がるような、やさしい表現と、世紀の発見にたどり着くまでの道のりが、ストーリーとしてとても読みやすく楽しく書かれています。
たとえば研究を始めたころに、あまりにもお金がなくて、3ヶ月のフィールドワークでお米以外の食料が底をつき、残りの1か月はお米だけで暮らした話とかね。
常識が破られるとき
実は鈴木さんが論文を出し始めた頃、海外の動物学者たちからかなり反論があったそうです。
「言語を扱うのは人間だけ」そんなアリストテレス以来何千年もの常識に反する論文なんだからそれはそうですよね。
しかしさすがは科学の世界、論文を出し続けると、査読を終えた反対派の科学者からもどんどん肯定的なコメントがいただけていったそうです。
科学の世界はやはり素晴らしいですね。
私もナマで聞いたことがあります
この本を読んで気がつきましたが、時々行くゴルフ場で「ピーツピ」という鳥の声を確かに何回か聞いてます。
「棒を持ったジジイたちが来るぞ!警戒!警戒!」
ってことだったんですね きっと(笑)
動画でぜひ確かめてみてください
NHKテレビ サイエンスZEROでも鈴木さんの学説が取り上げられています。
本を読む前にぜひこちらもぜひご覧ください