雑草:名もなき草の名(34)ひと寝して起きたら即仕事!地を這うメヒシバは雑草のエリート?

    みかドン ミカどん

    今回もよく見かけるのに意外に名前が知られていない雑草のご紹介です。それはメヒシバ。他の雑草と同様にたくましく生きる道端のサバイバーですが、それには「寝てよし、起きてよし」の優れた特徴があるからです。

    抜いても抜いても時間差で発芽するメヒシバ

    メヒシバ(画像:写真AC)

    夏の終わり、道ばたや公園の隅で地を這うように生えている、笹のような葉っぱの草がメヒシバです。

    正式にはイネ科メヒシバ属で、日本中どこにでも生えている雑草ですが、時間差をつけて段階的に発芽する性質(非同期発芽)を持つため、いっせいに除草しても、そのうちまたどこかから伸びてくる厄介な草でもあります。

    メヒシバは漢字で「雌日芝(めひしば)」と書きます。これは似たような見た目でメヒシバよりがっちりしている「オヒシバ(雄日芝)」と対になっている名前です。

    日芝というのはメヒシバやオヒシバのように、放射状に穂を広げる芝生のような植物を表す古い呼び名のようですが、夏に日差しの強い場所でも枯れずに元気に育つ草という意味で「日」の字が使われているとも言われています。

    ちなみにメヒシバには「アイノコシバ」という雑種も存在します。名前から見てメヒシバとオヒシバの「あいのこ」ように考えてしまいますが、そうではなく、これは「メヒシバ × アキメヒシバ」「メヒシバ × 外来種の同属雑草」などメヒシバの仲間同士の雑種だそうです。

    見た目はそっくりですがメヒシバとオヒシバはまったく別の植物のため交雑することはないとのこと。名前はペアでも実際にペアになることはないんですね。

    三方よし?のエリートです

    左から オヒシバ、 メヒシバ、 コメヒシバ(画像:かまがや散歩

    メヒシバは、優れた繁殖力と環境適応力を持つ一年草の雑草ですが、その生存戦略の一つとして、「休眠」と呼ばれる現象が知られています。

    前回ご紹介したスベリヒユもそうですが、雑草の中には種子が地面に落下してもすぐには発芽せず、一定の期間を経た後に発芽可能な状態になる性質を持つ種類があります。

    具体的には、メヒシバ(通常2~3年まで。最長5年)、オヒシバ、スベリヒユ(最長30年)のほか、シロツメクサ、オオアレチノギク、ナズナ(最長10年)などがその仲間で、気候や環境が不安定なときでも発芽しないで待つことができるので、枯死のリスクが軽減されます。

    メヒシバの最長休眠期間はスベリヒユやナズナに比べると短めですが、メヒシバのすごいところは他の植物と違い、環境が整って発芽するとあっという間に伸びてしまう成長スピードの速さです。

    しかもそれが時間差で行われるので発生は常にバラバラで、しかも芽が出たら伸びるのが超速い!これは確かに除草が面倒な植物ではありますが、逆に言えば幾重にも生存戦略の保険をかけている雑草ということになります。

    メヒシバは茎が横に這って伸びていくタイプ(「ほふく茎」)なので、草刈りや踏圧にも強く、「寝てよし、起きてもよし、踏まれてもよし」の、まさに三拍子そろった雑草エリートと呼んでもいいのかもしれませんね。

    (ミカドONLINE編集部)


    出典/参考記事: 植物の一生- メヒシバ編 -|秋田大学(PDF) など