(57) 川崎汽船が凧(たこ)のチカラを活用する再エネアシスト船に着手

    みかドン ミカどん

    大航海時代から風力は船の動力源でしたが、近年、新しい形で風力を船に活用する取り組みが進んでいます。今回はその一部をご紹介します。

    海運業界で風力活用が期待される理由

    (画像:川崎汽船

    川崎汽船が“凧(たこ)”で船舶を引っ張る「シーウイング」の実用化を目指しています。これは風の力を併用することで船の燃料を減らす取り組みです。

    川崎汽船によると、風力による船舶のけん引によって、約20%のCO₂を削減する効果があり、1隻あたり年間5,200トンものCO₂削減が期待できるそうです。

    商船三井も日本郵船もすでに風力活用には着手しており、それぞれが独自のアイデアで実用化を模索しています。

    海運各社が風力に注力する理由は、燃料を変えずに温室効果ガスの排出量を削減できるからです。

    国際海運で排出される温室効果ガスは2018年時点で約7億トンで、世界全体の約2%を占めており、これは実にドイツ一国が1年間に排出する温室効果ガスの量に匹敵します。

    しかし海運業界では、現行の重油に代わる次世代燃料としてアンモニアや水素、グリーンメタノールなどが検討されているものの、いまだに本命は定まっていません。また燃料を変えた場合は各港での燃料供給体制の構築にも時間がかかります。

    これに対し風力推進装置は搭載すれば即効性があり、従来の燃料を使ったまま温室効果ガスの削減が可能になるため、各社がいっせいに注目し始めたのです。

    航空事業の知見を駆使して開発されたしくみ

    川崎汽船が着手したシーウィングのシステムは、エアバス(フランス)の子会社「エアシーズ社」が開発したものです。

    エアシーズ社では航空事業で得られた風の知見を活かして船に搭載できる凧(たこ)のしくみを構築し、すでにエアバス社の部品運搬船などに導入されているそうです。

    川崎汽船では2017年から同社と共同でこのプロジェクトを進めてきましたが、今年(2024年)の2月にエアシーズ社からこの事業を買い取り、フランスに「オーシャニックウィング」という会社を新たに設立しました。

    OCEANICWING S.A.S.設立およびAIRSEAS社の事業承継について | ニュースリリース | 川崎汽船株式会社

    シーウィングシステムの凧は決して原始的なものではなく、スイッチひとつで自動的に動作し、様々な気象データ、海象データをリアルタイムに分析します。これによって効果的に風をつかまえることが可能になりました。

    エアバス社ではまったく違うスタイルの風力アシスト船を開発

    (画像:Sustainable Japan

    この記事を書くにあたり、シーウィングシステムがすでに導入したとされているエアバス社の部品運搬船を検索してみたところ、びっくりする記事に出会いました。

    川崎汽船が取得した旧エアシーズ社のかつての親会社であるエアバス社では、まったく違うスタイルの風力アシスト船を開発し、欧州と米国の生産拠点間をつなぐ大型航空機部品のチャーター船を全てこの船に切り替えると発表したのです。

    【国際】エアバス、機体部品輸送の大西洋横断船に風力推進ローター6基搭載。eエタノールエンジンも | Sustainable Japan (有料記事)

    素人の考えで、川崎汽船が取得したの凧の会社の技術は親会社が切り離したテクノロジーなのではないかと一瞬心配になってしまいましたが、新造船に限らず様々な船種に対応できる点やコスト面で導入しやすい印象があるので、この先の展開が注目されるところです。

    世界中の荷主から選ばれ続けるためには、自社がいかにクリーンなエネルギーを使っているかを強力にアピールしていく必要があります。

    環境保護を重視するルールチェンジによって船舶業界にも再生可能エネルギー活用の波が押し寄せていることを痛感した一連のニュースでした。

    (ミカドONLINE 編集部)


    参考/引用記事: 川崎汽船は〝凧〟生かす…海運3社の脱炭素、「風力推進」に真っ先に取り組む理由/ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 エネルギーと環境 Vol.48 “凧”で貨物船を引っ張る 驚きのアイデア |/エネフロ 

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