今回の雑草はオナモミです。俗にひっつき虫と言われているようですが、東北では「バカ」で通じますよね。実は現在、私たちがよく見かけるオナモミは外来種の「オオオナモミ」などで、本来のオナモミは絶滅危惧種なのだそうです。今回は「違いのわかる女」のワタクシ(本文参照)がオナモミについて調べてみました。
マジックテープのヒントになった植物です
オナモミは道端や荒れ地などで見られるキク科の1年草です。
7月から9月にかけて開花し、8月から10月に結実します。
トゲのあるイガイガの実が衣服によくくっ付くので、小さい頃にこれで遊んだ人も多いのではないかと思います。
オナモミは北日本では「バカ」とよく呼ばれますが、この呼び名は九州でも使われているそうです。そしてなぜか「ドロボウ」という名前も付いています。
これは普通の人が歩かないような所を歩いて種をくっつけてくるのは「どろぼう」であり、衣服に種が付いているのに気づかないのは「ばか」だということを意味しているようです。
本来のオナモミの名前の由来はいくつか説があり、引っ掛かるという意味のナズム(泥む/滞む)が、ナゴム→ナモミという順に転訛したと解説されていたり、茎葉を揉んでつけると虫刺されに効くため『ナモミ(生揉み)』という名がついたと書かれていたりします。
オナモミはマジックテープ(面ファスナー)のきっかけになったことでも知られていますが、実際は発明者のスイス人がヒントにしたのはオナモミではなく、オナモミの仲間の野生のゴボウの実だそうです。
※ちなみに「マジックテープ」はクラレ(日本)の登録商標なので、スイス人の発明には「面ファスナー」と書くのが正解ですが、あまりなじみがありませんよね・・・
オナモミは絶滅危惧種です
オナモミは私が小さい頃に近所の空き地でよく見かけた植物ですが、近年見かけるオナモミはほとんどが外来種のオオオナモミとのこと。
現在、オナモミは環境省レッドデータブックで絶滅危惧種Ⅱ類(VU)に指定されており、その背景には1929年に日本に入って来たと言われる北米原産のオオオナモミやイガオナモミの存在があります。
オオオナモミやイガオナモミは繁殖力が高いため、競合に負けたオナモミは、西日本では1960年代には姿を消したとみられ、特に東京都・三重県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県・高知県では絶滅したと報告されています。
そのため外観がよく似ているオナモミとオオオナモミは混同されていることが多く、図鑑でさえも間違って掲載されていることがあるそうです。
オナモミのことを今まで普通に”バカ”と呼んでいましたが、こうなってくると温かく見守りたい気持ちになってきます。
オナモミとオオオナモミの違い(見分け方)
オナモミとオオオナモミの見分け方ですが、以下のような違いがあります。(個人の主観的な表現も入っています)
オナモミ
【実の形】ピスタチオ状の丸み
【茎の色】黄緑系
【実の付き方】少ない実が数個単位でパラッと
【トゲ】まばらで1〜2ミリ
【熟すと】黄緑または薄茶
オオオナモミ
【実の形】アーモンド状に細長くオナモミよりも大きい
【茎の色】紫がかっている
【実の付き方】多くの実が密集してがっちゃり
【トゲ】密で3〜6ミリ
【熟すと】茶色
ネットに掲載されているそれぞれの写真を見る限りでは、実の形(大きさ、縦横比)や茎の色が一番の決め手かもしれませんが、近縁種の交雑もあるようなので判断が難しいようです。
西日本では1960年代にほとんど姿を消したと言われているオナモミですが、宮城県の私が手に取ってよく遊んでいたのは、オオオナモミではなくやはりオナモミのほうだったと思います。
なのでネット上の写真を見ると感覚的に違いがわかる気がします。(名前を間違えて掲載しているケースも見てすぐわかります)
オナモミの数の減少は急激に進むらしく、外来種との競合だけでなく台風や夏場の高温等の影響で10年の間に群生地が消えてしまったという例もあります。
ですが以下のデータベースを拝見すると、東北6県のオナモミの絶滅危険度は「秋田/山形/福島>宮城>岩手」となっており、青森はまだ安泰?で宮城や岩手でもがんばって探せば見つかる可能性がありそうですね。
皆さんが最近目にしたオナモミはどちらですか?近所にオナモミがある方は、今度ゆっくり観察してみるのもいいかもしれません。
(ミカドONLINE編集部)
出典/参考記事:ひっつきむし図鑑(PDF) ひっつきむしこと「オナモミ」が既に近畿で絶滅していたことが明らかに | 秒刊SUNDAY ひっつき虫の「オナモミ」実は絶滅危機 毛の少ない外来種が大暴れ オナモミ:神奈川県南部「湘南・鎌倉・三浦半島」の花暦を少しずつまとめています 【オナモミ】実は絶滅危惧種だった!?オオオナモミとの違いは? – アタマの中は花畑 ひっつき虫のオナモミ特集!実は絶滅危惧種!?基本情報まとめ【植物図鑑】 | kurashi-no など