刑事コロンボに見る当時の最新機器(7)フロッピーディスク

    みかドン ミカどん

    刑事コロンボは1968年から2003年まで米国で放送された全69話の人気ドラマです。このシリーズではドラマの中で当時の最新鋭機器という扱いで描かれている家電やシステムについてご紹介をしています。(ネタバレを含むので要注意!)

    第57話「犯罪警報」ではPC間のデータ移動にフロッピーディスクが登場

    YouTube「Caution: Murder Can Be Hazardous to Your Health」

    刑事コロンボでは社会的地位の高い人物が犯人や被害者として登場することが多く、その裕福さを表す小道具として、当時は最新鋭だったと思われる電化製品やデジタル機器がよく登場します。

    今回も前回と同じく刑事コロンボ第57回「犯罪警報」(原題 Caution: Murder Can Be Hazardous to Your Health「注意:殺人はあなたの健康に有害です」)(米国1991年、日本1995年)に焦点を当てて、ドラマに登場するフロッピーディスクについて解説したいと思います。

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    この回の犯人は「犯罪警報」という番組の人気キャスター ウェイド で、番組は視聴者からの通報で未解決事件の犯人を捜すという内容です。

    ウェイドは番組で取り上げるニュースのネタを文章にまとめて整理しており、自宅で作成した文書をテレビ局のPCで使用するため、それらをフロッピーディスクに保存していたものと思われます。

    ウェイドは過去にポルノビデオに出演したことがあり、そのことでウェイドの後釜を狙う他のキャスターから「番組を降板しなければ秘密をばらす」と脅されて、結局殺人を犯してしまうのですが、ここでの証拠隠滅にもフロッピーディスクが登場。

    殺された人物のPCに自分の秘密を暴く文章が残されていたため、ウェイドは自分のフロッピーディスクに入っていた自作の別な文章でそれを上書きしてしまうのです。

    インターネットがまだ普及していなかったこの時代、PCは計算機のように単独で使うのが標準で、自分でつくった文書や表などのファイルを他のPCで使うためには、いったんフロッピーディスクに保存してそれを持ち歩くのが一般的でした。

    DVDは当然まだなく、読み書きできるメディアとしてのCD(CD-ROM)も普及前だったので、当時はプリンターなどの周辺装置には必ずドライバのインストール用のフロッピーディスクが同梱されており、この頃はゲームやアプリもフロッピーディスクで提供されていました。個人的にはPC雑誌の付録として付いてくる便利なアプリがいろいろ入ったフロッピーディスクが楽しみだった記憶もあります。

    PCの黎明期を支えた重要な記録媒体

    (画像:Wikipedia

    フロッピーディスクは、1971年にアメリカの IBM が開発した記録メディアです。中心となったのはIBMの アラン・シュガート(Alan Shugart) らのチームで、当初は直径8インチ(約20cm)の大きな円盤でした。

    これは紙のパンチカードに代わってコンピュータへデータを入れるための手段として考え出され、約80KBの情報を保存できました。今となっては少なすぎますが、半角英数字が約82,000文字入る容量は当時としては革新的なものです。

    その後、より小型で扱いやすい 5.25インチ型 が1976年に登場し、パソコンの普及とともに世界中に広がります。家庭用のApple IIやIBM PCなどに採用され、当時のソフトの配布やデータ保存の標準となりました。

    さらに1980年代には 3.5インチ型 が登場します。硬いケースに守られ、ポケットに入れて持ち運べるサイズで、耐久性や信頼性も向上しました。今では知っている人でも、フロッピーディスクといえばこのサイズしか見たことがないという人がほとんどだと思いますが、当社の沢田会長は「大きくてペラペラだった」前世代のフロッピーディスクも扱った経験があるそうですよ。

    3.5インチ型 のフロッピーディスクは最大1.44MBまで保存でき、1990年代を通じて主流となりました。

    刑事コロンボに登場するフロッピーディスクもこのサイズです。番組をあらためてよく見るとドラマに登場するフロッピーディスクはフジフイルム製の「MF2DD」という製品で、なんと今でも販売されているようです。(ちなみに主な用途はワープロ用らしいです)

    やがて1990年代後半からはCD-ROMやDVD、2000年代にはUSBメモリやインターネットによるデータ配布が普及し、フロッピーの役割は急速に縮小しました。それでも長い間「保存媒体の代名詞」として親しまれ、パソコン文化の黎明期を支えた重要な存在といえるでしょう。

    (ミカドONLINE 編集部)


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