刑事コロンボに見る当時の最新機器(3)テープ式ボイスレコーダー(マイクロカセットレコーダー)

    みかドン ミカどん

    刑事コロンボは1968年から2003年まで米国で放送された全69話の人気ドラマです。このシリーズではドラマの中で当時の最新鋭機器という扱いで描かれている家電やシステムについてご紹介をしています。(ネタバレを含むので要注意!)

    第44話「攻撃命令」に登場するテープ式ボイスレコーダーは日本製だった

    今回は刑事コロンボ(新・刑事コロンボ)の第44回「攻撃命令」(原題:How to Dial a Murder)登場するテープ式のボイスレコーダーについてです。

    「攻撃命令」の初回放送は、米国では1978年、日本では1979年です。その頃はすでにカセットテープレコーダーが普通に出回っていたので、テープ式の携帯用小型レコーダー(以下、マイクロカセットレコーダー)自体もそれほど珍しいものではなかったように思われます。

    ですがこのレコーダーは、音声に反応して自動的に録音を開始するための別なデバイスとセットになおり、そのおかげで意図せずに録音されたある会話が事件解決の手掛かりになるというストーリーだったのです。

    「攻撃命令」では、犯人が2匹の飼い犬(ドーベルマン)に特定の言葉を聞かせると特定の人物を襲うように訓練をほどこし、それを殺人の手段にします。

    コロンボはその言葉をなんとか知りたいと思い、マイクロカセットレコーダー(ボイスレコーダー)をこっそりレインコートのポケットにしのばせて心理学者である犯人を訪問します。そして「かねてからお願いしていた自分の性格分析をしてほしい」と頼み込んで、連想ゲームのような言葉遊びを犯人と交互に行います。

    それはゲームを通じて犯人がうっかり(または無意識に)キーワードを口にしてしまうのではないか?というコロンボ流の期待によるものでしたが、ひそかに録音したその一連の会話を犬に聞かせても、犬たちはまったく反応しませんでした。

    ところがその日の帰り際、犯人とコロンボが門の前で交わした雑談のほうに偶然キーワードが含まれていたのです。それがこのボイスレコーダーの録音開始機能のおかげで自動的に録音されていたというわけです。それを聞いた犬たちがたちまち様相を変えたのはご明察の通りです。

    このマイクロカセットレコーダーのメーカーを調べてみたところ、なんと日本製であることがわかりました。メーカーはオリンパス。しかも現在の価格に換算すると本体だけでも12万円以上、さらに同梱のFMチューナー(ドラマには登場せず)と今回使われた音声起動装置の3点セットで17万円程度の高価なモデルだったことがわかりました。

    ※ChatGPTさん、大きなヒントをありがとう💕

    オリンパス パールコーダーSD

    刑事コロンボ第44回「攻撃命令」(原題:How to Dial a Murder)に登場するマイクロカセットレコーダーはオリンパス社の「パールコーダー SD(OLYMPUS PEARLCORDER SD)」です。

    この商品の発売が1977年なので、翌年放送された刑事コロンボでは、発売間もない、まさに話題の商品を使っていたことがわかります。私の勝手な想像ですが、この製品の存在が逆にプロットのヒントになったのでは?と思ったりします。

    今回初めて知りましたが、オリンパスは世界で初めてマイクロカセットレコーダーをつくった会社だそうです。世界で一番最初の製品は1969年に発売された「ズイコーパールコーダー」でした。(ズイコーはオリンパスのカメラレンズのブランド)

    同社はその後の1970年代には「パールコーダー(PEARLCORDER)」シリーズを展開しています。中でも今回ドラマに登場するパールコーダーSD(1977年発売)は金属製ボディ(シルバー仕上げ)の携帯型録音機で、下部に各種モジュールを接続できる「Dシステム」という拡張機能を備えており、それが話題になって世界的にも一定の評価を得たようです。

    このDシステム用オプションの一つに、音声起動録音モジュール「Voice Actuator DVA1(ボイス アクチュエーター DVA1)」があります​。このDVA1をパールコーダー本体に装着すると、周囲の音声を検知して自動的に録音を開始・停止することが可能になり​、まさに劇中でコロンボが使用していた「音声に反応して自動スイッチが入る」装置に該当します。

    1970年代にこの機能があるマイクロカセットレコーダーは唯一無二といってよく、当時のオリンパス社の先進性を垣間見ることができると思います。

    マイクロカセットレコーダーは、主に、会議・メモ・留守番電話のメッセージなど、小型で音質があまり重要視されない録音向けの製品を中心に一定範囲の普及が見られました。

    しかし、留守番電話用はICタイプに、音声メモや会議の録音もICレコーダーにそれぞれ置き換えが進み、2010年7月に最後まで残っていたソニー製の機種の生産が完了したことで、全てのマイクロカセットレコーダーやマイクロカセット留守番電話の製造・販売が終了しました。

    なお、録音用テープの供給は、最近までオーム電機が行っていましたが、これも現在は販売終了としているいるそうです。

    刑事コロンボでは、日本製品や日本人(という設定の登場人物)がちょこちょこ登場しますが、今回のオリンパスは少し驚き少しうれしくなりました。独創的だった当時の日本製品が、物語の解決に絡むのは、悪い気がしませんよね(笑)

    (ミカドONLINE 編集部)


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