
刑事コロンボは1968年から2003年まで米国で放送された全69話の人気ドラマです。このシリーズではドラマの中で当時の最新鋭機器という扱いで描かれている家電やシステムについてご紹介をしています。(ネタバレを含むので要注意!)

第56話「殺人講義」では車の施錠・開錠にリモコンキーが登場
刑事コロンボシリーズはこれが最終回となります。今回は車のリモコンキーを取り上げます。登場するのは1990年に米国で放送された(日本では1994年公開)「殺人講義」(原題:Columbo Goes to College)です。
この回は大学生の二人組が犯人です。コロンボのドラマ史上最も若い犯人と言われており、当時60代になっていたピーター・フォークが演じる、老練なコロンボとの対比も話題になりました。そしてこの二人(犯人)が勉強もせずに遊んでばかりの学生なんですよね。そのため窮余の策として教授から試験問題を盗んでテストに臨もうとしますが、それが教授にばれてしまい落第か退学かの決断を迫られます。
二人組のうちロウという学生は弁護士の息子、クーパーという学生もお金持ちの息子で、この件が明るみになると”お先真っ暗”の状況になってしまうため、二人は結託して巧妙なトリックで教授を殺害してしまいます。しかもコロンボが特別講師として大学に招かれ、二人がコロンボの授業に出席しているときに何らかの方法で教授を殺害したため、コロンボは二人のアリバイを証明できる立場になってしまいました。そこから捜査が始まるというのがドラマのあらすじでした。
そのクーパー(お金持ちの息子)が学内で乗り回していたのがトヨタのハイラックスでドアの開錠も施錠もリモコンキーで遠隔操作ができる車でした。このリモコンキーは直接殺害のトリックには使われませんが、最後の謎解きタイムで再び登場します。教授の殺害は小型カメラとリモコンを巧みに使ったトリックであったことを、コロンボがリモコンキーを使って実演してみせるシーンです。
二人の学生が逮捕されるきっかけに関しては、いかにも刑事コロンボらしいエピソードがこのあともうひと山あるのですがそこは割愛いたします。
開錠/施錠のリモコンキーはこのドラマの頃に徐々に普及
世界で初めてリモコンキーを搭載して市販された車は1982年に発売された「ルノー・フエゴ」というフランス車でした。
初期のリモコン式キーレスエントリーシステムは1981年に特許が成立していましたが、遠隔操作には赤外線が使われていたため、テレビのリモコン同様に直線上でしか反応せず、距離が短く太陽光にも弱いなど、まだ欠点の多いものでした。
しかしそれでも、離れたところからドアロックを操作できる「ルノー・フエゴ」は、鍵穴に物理的にキーを差し込む手間から解放された体験が、多くのユーザーに驚きと感動を与えました。その感動は初めてテレビにリモコンが付いたときの感覚によく似ているかもしれません。
やがてキーロックシステムは赤外線から電波式に変わり、これを機に米国では少しずつ高級車に採用されるようになりました。日本でも1985年発売のホンダ「アコード」が国内で初めてリモコンキーを導入しました。
とはいえこのドラマが放送された1990年はまだまだ物珍しい存在で、そのためお金持ちの象徴として扱われ、かつ「犯人が授業中に電波で発射装置を遠隔操作する」という当時としては斬新なアイデアにもつながったと思われます。
リモコンキーはその後どんどん進化し、1998年に発売されたメルセデス・ベンツでは初めてポケットに入れたまま(ボタンを押さなくても)開錠ができるスマートキーが採用されました。コロンボの頃は先端技術の小道具として使われていたリモコンキーも今では車に標準装備され、ドアロックだけでなく家の中からエンジンもかけられるようになりました。
ちなみに私の車はいまだに「ボタンを押すタイプ」のリモコンキーなので、レンタカーや車検の代車でスマートキーの車に当たるとすぐに操作がわからず、お店に電話して聞いたことも何度かあります。世の中の進歩が早いと、意外なところで困ってしまうものですね。
お金持ちの息子が乗り回す車はなぜトラックなの?

最後に余談になりますが、二人組の学生犯人の一人クーパーが番組の冒頭で荷台に女の子たちを乗せて我が物顔で学内を走り回っているのはトヨタのハイラックス(1987年型・北米仕様)で、ピックアップトラックと呼ばれるタイプの車です。
ピックアップトラックは屋根のないむき出しの荷台が特徴ですが、日本ではこれの軽自動車版を俗に「軽トラ」と言うように、主に農家さんや職人系のお仕事に従事される方が利用するイメージです。
ですが刑事コロンボは、コロンボがロスアンジェルス市警(カリフォルニア州)に所属しているという設定のため、日本や米国の東海岸(ニューヨークなど)とはだいぶ自動車事情が異なるようです。
実は米国の西海岸側では今もピックアップトラックが人気で、DIYで建材を運んだり週末のキャンプなどのレジャー面で非常にニーズが高いそうです。多少事情が異なりますが、日本でいえば軽自動車の位置付けにも似ていて、「一家に一台あると絶対に便利だよね」という感覚で、車社会の米国で特に西海岸ではニーズが高い車種とのこと。
私はテスラが以前「ピックアップトラックを発売した」というニュースを目にして、「なぜトラック?」と疑問に思っていましたが、一部の地域では需要が高い車だったんですね。
さて、話を元に戻しますと、ドラマの中で日本車を登場させた理由としては、壊れない、維持費が安い、長持ちする、などの理由で所有者がある意味「賢く計算高い」人間であることを想起させるのだそうです。私は日本人なので、刑事コロンボを見てもそういった隠された意味に気付くことは滅多にありませんが、見る人が見れば、もっともっと見どころがあるのかもしれませんね。
刑事コロンボは今も人気があり、現在もNHK-BSで不定期に放送されています。またhuluでも全話見られますので、興味を持った方は確認してみてください。その気で見ると、思った以上に日本製品が登場することに気付かれると思います。
このシリーズはこれでおしまいです。お読みくださった皆さん、ありがとうございました。
(ミカドONLINE 編集部)
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